進む堕落

  • 2009/11/30 09:52
  • Category: 仕事
朝一で、医者に行く。乾燥の日本で喋り続けたおかげでノド痛が悪化し、ついでに昨日からは鼻水も始まった。医者殿はざっと問診・診察し、ノド痛と鼻水止めと、念のため咳止めの薬をくれた。種類は多いが量は3日分。無駄にならんでよろしい。ちなみにこれはただの風邪である。豚流感ではないので、生身のわたくしに遭うみなさま、安心されよ。(当ブログを読んでくださっている方で、生身の私に遭遇される方は、まずいないとは思うけれど)


ところで、トーキョー出張ではいつもの内幸町の某ホテルではなく、シャン○リラに泊まった。クライアントが選んだというより上司殿が選んだ感じで、行く前は人様のお金(=クライアントのお金)で不必要な贅沢をすることに、大いに抵抗を感じたのだが、実際に泊まってみたら、もう気持ちよくて、気持ちよくて、なけなしの倫理観と抵抗感など、どこかに吹き飛んでしまった。ああ、堕落。


バスルームは最近のホテルによくある、客室との間が壁でなくガラスで仕切られているタイプで、ゆったりひろーいし、トイレは別だし、ベッドはキングサイズだし、窓際にはカウチが伸びているし、双方向から座れる大きなデスクがあるし(片方のいすはゆったりした革張り、もう片方のいすはまっすぐな背の木製)、アメニティは私の好きなロクシタンだし、もう顔にこにこで、しあわせ〜。


朝ご飯つきのプランだったのだが、ルームサービスでも選択肢が多く、これまたしあわせ度の向上に貢献。(だって内幸町のホテルは、ふつうの朝食つきプランに含まれている朝食は、基本の3種くらいしかないのだ。しかもペイストリがぱさぱさだったりする。頼む気、起きん)コンチネンタル、ヨーロピアン、アラカルトと好きなものを一通り試してみた。ペイストリやベーグルがおいしくて困った。つぶつぶいっぱいのオートミール、ヨーロピアン・ブレックファーストに含まれていたフルーツ、ナッツ入りのミューズリもおいしかった。(←日本でミューズリ食べんでもよかろうと思うが、和食と中華には食指が動かんし)


もひとつ楽しかったのが、トイレ。東京では、シャワーつきトイレはホテルどころかオフィスビルでも当たり前だが、機種により快適度が違う。また内幸町の悪口になるが、あそこのは機種が古いせいか座っていると何分かごとにウィーンと“再起動”(?)するので、うるさくてかなわん。私は朝など用がなくても新聞広げてスツールに座っていたりするので、これが非常に気に障るのだ。その点、Sさんのは静かでよろしい。しかもセンサー付きで、トイレの前に立つと自動的に蓋が上がる。そのようすがなんだか擬人化されて見えて、私は朝トイレに向かい「おはよー」と言うようになった。例のBBCの番組で加来さんが、お掃除ロボットを使い始めてしばらくしたら、奥さんがロボットをペットのように扱い出したと言っていたが、それと同じである。センサーの働きが遅い時など「すみませーん」とか言っているのである。ひとりだからよいが、人が聞いたらかなりおかしい。


というようにSホテルでの滞在は大変楽しかったのだが、問題はこういう身の程知らずの贅沢に慣れてしまうと、一段下のホテルを実際以上にみすぼらしく感じてしまうことだ。自力で泊まれるホテルは一段どころか数段下のビジネスホテルなので、余りに差がありすぎて却って気にならないのだが、仕事で泊まるホテルだと朝から晩までのびっちりスケジュールによる疲れのせいもあって、調度にしろサービスにしろ微妙な差が拡大されて感じられ、つい“Shabby…”とか思ってしまう。


この仕事を始めたばかりの頃は、内幸町のホテルでさえ贅沢だと思っていたくせに、なんたる堕落。人間、贅沢に慣れるのは簡単でほんとに困る。
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パキスタン・デリ

しばらく前から商いをしている駅前の小さいパキスタン・デリ。冷蔵装置のないただのガラス・ケースに、サモサやらカレー(日替わりで1種のみ)やらをちまちま並べて売っているのだが、当地も気温が下がり冷蔵なしでもだいじょうぶだろうと思えるようになったので、この前カレーとサモサを買ってみた。発泡スチロールのパックにてんこ盛りのごはんに、お玉一杯のカレーで25元。じゃがいもとグリンピース入りのサモサは14元。


この日のカレーは羊肉のカレーだった。で、これがうまかった。プロがつくる美味さではなくて、料理上手の家庭の主婦が作る美味さ。味を占めて、出張の前日にも買ってみた。この時はトマト味の勝ったじゃがいものカレーだった。これも美味かった。一昨日はガラスケースの中に見慣れないオレンジ色のものが並んでいたので、店番をしていた奥さんに「あれ、なに?」と聞いたら人参を使ったデザートだという。そういえばインド料理の本で、そういうデザートを見た覚えがある。ためしに買ってみた。


料理書によると煮詰めて水分を飛ばした牛乳で人参を煮るんだそうだが、ほのかにスパイスが香り、人参はほろ甘くクリームの風味も感じられ、私は気に入った。1カップぜんぶ食べたいくらい気に入った。しかしそういうわけにもいかないので、がまんして雪だるまに半分あげた。


美味いということを発見して以来、店の前を通るたびにカレーを買いたくなって困る。なにしろこの店は駅からウチへの通り道にあるのだ。しかし肉入りだから雪だるまは食べないし、恒常的にダイエット中の身で三日にあげずカレーってのもなんである。(ごはん、てんこ盛りだし)駅からの別ルートを開拓すべきだろうか?


この店に限らず、最近ウチの近所にはパキスタン系と思われる小商いの店が増えている。昔々南ベトナムが崩壊した時には、ウチのちょっと先の埋立地のアパート群がベトナム人街のようになったと聞いているが、政情不安のパキスタンから逃げ出した人たちが、縁者を頼ってこの辺に住み着き始めているのだろうか。気に入りのカレー屋さんとも「いつからHKに住んでるのー?」とかの話はしていないので、正確なところはわからんのだけれど。

率直なご発言

  • 2009/11/26 13:30
  • Category: 仕事
昨日このブログに「60代、70代の経営者は救いがたく保守的だ」と書いたが、本日上司殿は朝一番の某日本人コンサルタントへの手紙に「ご提案はありがたいが、経営者が60代、70代なら会うだけ無駄だ。保守的なうえ意思決定が超のろく、話にならん。第一その年齢では出張もままなるまい」と書きおった。いやもちろん原文は中国語で、私がそれを日本語にしたのだが、書いていて「ひえー、なんて坦白(=率直)。これじゃあ、ちょっと失礼ではないか?」と思わず口がへの字になった。(このコンサル氏自身、60代に近いのだ)


で上司殿に「上司、これこのまま書くと、日本では失礼なんですけどぉ?」と言ってみたが、上司殿「え、どこが?」と全然失礼だとは思っていないようす。勝手に直すと上司殿に訂正を要求されるので(上司殿は日本語は書けないが読める)、仕方ない、すこーしだけ表現を軟らかくして、そのまま書いた。受け取ったコンサル氏が顔色を変えるのが目に見えるようだ。


そういえばこの前も、某仲介人の役割の胡散臭さを臭わせる手紙を書いて、しかもそれを当の仲介人に読まれたが、上司殿少しも悪びれることなく「だって本当のことです」と当人の前で胸を張っていた。自身の行動に恥じるところなしと胸を張るのは立派だが、黒社会との繋がりも噂される某氏なのだから、酒席の帰りに背中を刺されたりしないように気をつけようね、上司。

生きのいい男の子たち

  • 2009/11/25 17:09
  • Category: 仕事
最近、元気がいいのは30代か。今回の東京では金融関係のほか、クライアントと同業の日本企業も何社か回ったのだが、ビジネス協力の提案に対し、積極的反応を示したのは、経営者が比較的若い企業(マックス40代)だけだった。


会議に出席した経営幹部が60代とかの会社は、一応話は聞いてくれるが「社内で検討しまして」とか「私どもでお役に立てるかどうか・・・」といった消極的反応ばかり。


帰りの飛行機は運悪く上司殿と隣り合わせの席だったのだが、上司殿も「白髪のおじさんが出てくるような会社は見込みがない。これからは経営幹部が60代以上の会社には行かないようにしよう。行っても無駄、無駄」と悪口の言い放題。私も「そう、ほーんとやる気がないですよね。どうしてああ保守的なんでしょう」と二人で言い合い、ここだけは意見が一致した。


それに比べ今回そうした同業とのミーティングをアレンジしてくれた30代半ばの男の子たちは、それぞれの専門分野に精通し、日本語も喋るし、英語も喋るし、反応は早いし、ついでに言えばどういうわけだかみんな小柄ではあったが、細身のスーツをぴしりと着こなして、生きのよさが身体中からあふれ出ているようで、いっしょに仕事をしていて大変気持ちがよかった。あれだけ生きがよければ、魚屋になっても成功できるに違いない。(あ、関係ないか…)


60代の経営幹部だって、前世紀の70年代、日本企業が世界に進出していった時には、それなりにやる気にあふれ元気いっぱいだったろうに、いったいどうしちゃったのだろう。少なくとも今回会った数人はみんな守りの姿勢に入っていて、新興の中国企業なんか見向きもしない感じだ。もしかしたら過去さんざん騙された苦―い経験があって、羹に懲りて・・・なのかもしれないが、中国市場はそれなりに美味しい市場なのだから、火傷しないように注意して食えばいいのに。

別人loutra

  • 2009/11/24 15:36
  • Category: 雑記
昨日は代休で本日より出勤。またまた窓のない小部屋で、ピコピコとパソコンを打つ毎日の開始である。


それに比べて昨日の楽しかったことよ!
空は晴朗、抜けるように青く、お日様ぽかぽか。雪だるまのいない休日とあって、時間は全部わたしのもの。おまけに大嫌いな出張は終わり、次の出張予定はなし。こんな気持ちの晴れ晴れする休日の条件が他にあるだろうか?


わたしは明るい陽射しの入る自室で、ふらーふらーとネット巡りをしたり、本を読んだり、昼寝をしたり、道楽ごとの手細工であそんだり、もうしたい放題。おまけにflickrにアップした写真に、敬愛する寄稿者の方からコメントが入っていて、心中ピンクのハートマークでいっぱい。勢いでflickrのアカウントをプロにしてしまった。もともといつかはプロにアップグレードするつもりだったのだが、昨日アップグレードに踏み切ったのは、コメントをもらえた嬉しさによる舞い上がりと天気のよさのせいである。これが曇りや雨だったら、コメントもらえてもアップグレードはしなかったと思う。天気が悪いと、慎重・消極的になるんである。(ちなみにflickrのプロ・アカウントと普通アカウントの違いは、単にアップできる写真の枚数の差のもよう。利用料無料の普通アカウントの場合、200枚までしかアップできないが、プロなら無制限にアップできる。“プロ”と言っても別に写真の技量がプロフェッショナルということではない)


それにしても行く前はいやでいやで、朝交差点を渡る時など「車、ぶつかってくれんかなあ」とまで思っていたくせに、いざ空港に着き、客と挨拶を交わす段になると、顔に笑みを浮かべ、そこそこ愛想よく応対し始める私のモード切り替え能力に呆れる。パーティで喋りつづけ、ノドと足が痛くなった時などは、15分くらい階段に隠れていたりするが、それ以外ではずっとにこにこ、てきぱきである。普段の仏頂面とは別人のloutra出現。我ながら、ようわからん。


ということはもしかして、毎日出張に出て、毎日プレゼンしてれば鬱々とはしないということ? いやまさか。神経切りっぱなしで、ジンセイは送れんわ。別人loutraは私ではないし。

どんより

  • 2009/11/16 14:18
  • Category: 仕事
明日からオシゴト出張で、もうどんよりしまくり。この社交嫌いと勤労意欲のなさ、なんとかならんのか、自分。


いっしょに出張に行く会社の主席が政府とコネのある人なので、空港ではふつうのチェックインカウンターの煩雑さを避けるため、HK政府VIP用ラウンジを予約したそうである。で、私にもそこへ来いという。同社から送られてきた地図で見る限り、そのラウンジはターミナルの右端にあり、VIP用駐車場からは近いが一般人用の出入り口からは遠い。広いターミナルを端から端まで移動することを考えて、かなーりげんなり。ラウンジで何かすることがあるとも思えないし、「(面倒なので)搭乗ゲートでお会いします」メールでも出そうかしらん。


それにしても空港に現れたとたん報道陣に囲まれる政府高官でもあるまいし、なんでそんなラウンジ予約したのだろ。それとも私が知らないだけで、彼はとっても有名なんだろうか?

言葉は二の次、三の次?

  • 2009/11/13 17:07
  • Category: 言葉
雪だるまは昨日も1日、仕事がなかったそうである。クビ確定かな、こりゃ。道楽に金を遣っている場合ではないかもしれん。


ところで、まだ実物を見たこともないのに私がバイトを目論んでいるお義父さんちの近くのコンビニだが、ここの経営者は沈陽出身の中国人夫妻である。数年前カナダに移民し、最初はモントリオール郊外に住んでいたらしいが、2年ほど前だかにケベックの田舎にコンビニの売り物があると聞き、買って商売を始めたのだそうだ。最近は手伝いを雇ったらしいが、最初は夫婦二人だけで24/7で働いていた。


このご夫婦のすごい点は、フランス語どころか英語もろくに喋れなかったのにカナダへの移民を決め、実際に移民し、23年後には店舗を買って商売を始めてしまったところだ。実際今でもフランス語はろくに喋れないのだが、それでも客との応対は何とかなってるそうである。たいしたもんだ。


わたしなんぞは「喋れなけりゃ商売にならんだろ」とハナから決めてかかってしまうが、どうも世の中そういうもんでもないらしい。まあコンビニだから客は棚から品物を取ってレジに持っていくだけ。レジでは数字はレジスターに表示されるから、店側はにっこりと金を受け取り、釣り銭さえ間違いなく渡せばそれですむのかもしれないが、それにしても大変な度胸だと私は思う。夏に帰省した時、そのコンビニに行き、主人夫妻と中国語で喋ってきた雪だるまも同じ感想を漏らしていた。


一方「ああ、そういう人はよくいますよ」と驚きもせずに話を聞いたのは、同じく中国人で、偶然同じく沈陽出身で、日本で仕事をしているCさんだ。沈陽は古来多くの華僑を生み出した土地とは思えんけど、それでもこの反応。とすると華僑輩出の福建や広東で同じ話をしたら、こちらが何に驚いているのか全くわかってもらえないかもしれん。確かに故郷で食い詰めて、あるいは一旗挙げようと海外に出て行く人たちにとって、現地のことばができるできないなど、二の次、三の次。言葉は行ってから(必要なら)覚えればいいんであって、「覚えてから行こ」なんて悠長すぎて話しにならんということか。まあね、タイに行くのにタイ語、ボルネオ行くのにマレー語、ケベック行くのにフランス語なんてやっていたら、日が暮れてしまうかもね。

窓際族

  • 2009/11/12 15:29
  • Category: 雑記
私の気分の落ち込みがやや好転したと思ったら、今度は雪だるまが落ち込み始めた。いつもは嬉しそうに「ただいまー」と帰ってくるのに、昨日は暗い顔で元気なく帰ってきて、ぶーとしている。大変珍しい事態なので「どうしたの?」と聞いたら「1日中何にも仕事がなかった」と、うんざりした声で答えた。


確かに何にもすることがないのに、1日中会社にいなければならないのは大変しんどい。業務が翻訳では、「仕事を見つけてやる」というわけにもいかないのだ。会社が請け負った仕事でなければ一銭にもならないし、第一翻訳すべき契約書や資料が、その辺にころがってるわけもない。


雪だるまは「この分だと年末でクビになるかも」とくらーい顔をしているが、それを聞いた私のほうは嬉しいような、困ったような。
嬉しいのは、雪だるまがクビになれば、私ももういい加減うんざりしている今の仕事を大手を振って辞められるからだし、困るのは今の金利水準が続く限り仕事を見つけなければ生活できないのだが、ケベックの田舎の景気がHKよりましなはずはなく、仕事が見つかるとは思えないからだ。せっかくカナダに帰っても、寒さとひもじさと未来のなさに震えているのでは、全然楽しくない。空が青く、水道から出てくる水が透明なだけでは、だめなのだ。分をわきまえ、ミニマムな生活を心がけるつもりではあるけれど、痩せても枯れても現代人の私たち。西部開拓時代的生活はできかねる。暖房費節約に“お婆さんは森へ柴刈りに”行ってもいいが、雪が積もる前に行かんとな。2メートルの雪の下の柴は刈れんぞや。

一見さんお断り

  • 2009/11/11 20:17
  • Category: 仕事

先週から日本の会社に電話し「中国の同業者とオハナシません?」と誘っているのだが、今のところ応じた会社はゼロである。まあ飛び込み営業のようなものなので、1回でアポが取れるとは思っていないが、それにしても今回対象の某業界に限って言えば、日本の市場は頭打ち。金融危機の影響もあって、どの会社も売上が減少しているのに、世界で唯一需要が伸びている中国に、まったく何の興味も示さないってどういうことよ? 

しかも今回の“オハナシ”は、「ウチ、中国本土にいっぱい販売拠点があるんだけど、そこでオタクの商品売らない?」というお誘いであって、出資の依頼でもなければ、ウチの商品売ってくれでもない。日本側にとっては非常にリスクの低い話であるとおもうのだけど、それでも興味を示した会社はゼロ。某社に至っては「新規のお話はすべてお断りするようにと上から指示されておりますので」と取り付く島も無い。「新規はすべてお断り」って、じゃあ一体どうやって業務拡大するのよね? 潰れず現状維持さえできればいいってこと?

まあねー、聞いたこともないようなアヤシイHKの金融会社からの電話なんて、まともに相手をする気にもなれないのかもしれないが、一営業員ならいざしらず、トップから3番目くらいの人だったら、将来を見据えて少しは興味を示してもいいんじゃないかと思うんだけど。人口は増えない、収入は増えない、の日本市場にだけしがみついててどうするのさ?

日本企業とアポ取るには、然るべき紹介者がいないとだめということかしらん。偉いさんの知り合いとか。たとえばその会社に融資している銀行からとか話を持っていけば、一発でアポ取れるんかな。

それにしてもしかし一見さんお断りって、京都のお茶屋さん並みですな。そんなエクスクルーシブな商売していていいのか、今時。

遺伝子組替えと歯列矯正

  • 2009/11/10 15:27
  • Category: 雑記
先週の日曜、聞こえてくる内容のおもしろさに惹かれて途中から見たTV番組、あとで調べたらBBCの”Visions of the future”2007年制作)という番組だった。先週のテーマは動物の遺伝子組替えで、現在その技術は私が思った以上に進んでおり、ヒトではまだだが、マウスではすでに遺伝子組替えにより学習能力・記憶能力の高い個体、運動能力の優れた個体を生み出すことに成功しているそうである。


つまり今後研究が順調に進めば、ヒトでも遺伝子組替えにより学習能力の高い個体や、体格や運動能力の優れた個体、特定の/あるいはすべての病気に強い個体などが作り出せるということである。わお!


ただし、そうなった時問題になるのは、私たちはどの程度までこの技術をヒトに応用したいのかということだ。遺伝子組替え技術が確立され、たとえば自分の子どもの遺伝子を組替えて、より学習能力が高く、より運動能力にも優れた子どもに“改造”できるようになった時、私たちは本当にそれを望むのかというだ。


慎重派の識者は、たとえば人類が全員、知力と運動能力に優れ、病気に強いスーパーマンのような理想的個体ばかりになったとして、それで果たして幸せなのかと問う。さまざまな個体がいて、さまざまな考え方をし、複雑な社会をつくっているからこそ、人類なのではないかという考え方だ。多様性を失った動物種は、生息環境が変化した時、それに適応できないとあっけなく全滅してしまう可能性があることも問題だ。


一方、よりよくできる技術があるのに、それを利用しない手はないという識者もいる。現在でも親は、子どものしあわせを考え、子供によりよい人生を送らせようとして教育を受けさせたり、いろいろなスポーツ教室に通わせたり、楽器を習わせたりする。そうやって子どもの成長環境を改善し、子どもを“よりよく”形成しようとすることと、遺伝情報を改善して子どもを“よりよく”することとの間に、どんな差があるのかという立場だ。


私としては、子どもの外部環境を整えるのと、内部(遺伝子)を整えるのは違うんじゃないかという気がするが、しかし考えてみれば、今だって親は子どもの身体を、よりよい状態に整えようとしている。多少の改造だって行なっている。歯列矯正などはそのよい例だ。歯並びの良し悪しは生死に関る欠陥ではなく、歯並びが悪くたって死ぬわけではないが、親は一応矯正を心がける。その方が子どもがよりよいジンセイを送れると考えるからだ。子どもの歯並びを整えることは、経済的に豊かな国々では今や当たり前で、悪い歯並びのまま放っておくと親の教養と資力を疑われる。
同様に、将来的にヒトの遺伝子組み替え技術が確立した時、子どもの遺伝子を“自然”のまま放っておくのは、親として恥ずかしいことになりうる?


番組の案内役は理論物理学者のカク・ミチオ(加来道雄)さんだったのだが、彼は「私も子ども達が小さかった頃は、ヴァイオリンを習わせたり、家庭教師をつけたりした。将来、たとえば隣の家の子どもが遺伝子組替えを受けて記憶力、学習能力が高くなったと聞いた時、そして学校で自分の子どもと競いあっていると知った時、自分の子どもにも遺伝子組替えを受けさせたいという気持ちを抑えるのは非常に困難だろう」と言う。確かにその通りだろうと思う。誰だって自分の子どもがハンディキャップを負って競争の場に出ていると知れば、心穏やかではなく、そのハンディをできるだけ取り除こうとするだろう。それが自然な感情だ。


ただヒトの遺伝子組替えには倫理的立場からの反対もあるから、ヒトクローン同様、各国政府が規制しそうな気もするが、しかしいったん技術が確立してしまったら、そのヒトへの応用を規制するのは、ほぼ不可能だ。もちろん法律を作り、応用を“禁止”することはできる。しかし禁止で無くなるのは適法な取引だけであって、違法な取引(闇マーケット)は無くならない。需要のあるところには常に供給が現れる。闇マーケットがなくなることはなく、違法取引を完全に取り締まることは不可能なのだ。


そしてたぶんここでも資力の差が能力の差につながるだろう。今だって経済力のある親の子どもは、家庭教師や塾など整った学習環境により高い学習能力を示しやすい。推測するに将来的な遺伝子組み替えだってタダではあるまいから、組替えするには費用がかかり、その費用を払える親の子どもだけが遺伝子組替えを受けられることになる。そうして二極化はますます進むのだ。番組でも言っていたが、地球のある国では清潔な飲み水すら確保できない児童が存在する一方、別の国では遺伝子組替えで高い能力や優れた健康を手にする児童が存在することになるのだ。かくて格差はますます進む。


ところで遺伝子組替えでは徳性の高いヒトを生み出すことはできないんでしょうかね? 知力も体力も健康も大事ではありますが、私はヒトに一番欠けているのは徳性だと思ってますので、むしろこちらを強制的に高める改造を心がけた方が“地球と宇宙のよりよい未来”につながるように思うのですが、いかがでしょうか。 


 
*”Visions of the future”3部作で、1. The Intelligence Revolution  2.The Biotech Revolution  3. The Quantum Revolution に分かれています。下記URL2のエピソードの一番最後の9分間ですが、同じ人が3部作全部アップロードしてくれていますので、興味のある方はどうぞ。大変面白いです。

 
http://www.youtube.com/watch?v=vOY55p27b-A&feature=PlayList&p=4058B174FC518D08&index=11

20貫

  • 2009/11/05 16:57
  • Category: 仕事
世の中には仕事に行くと考えただけで下痢になってしまったり、胃に穴が開いてしまったり、頭に丸いハゲができてしまう人もいるのだから、何の身体症状も出ていない私の場合など、ストレスの度合いは羽のように軽いものなのだろうが、毎朝の気の重さは20貫の大石を背中に背負っているようである。


私の現在のベンチ挙上重量はマックスで15貫なので、20貫は挙上重量以上。背中に背負うのと、ベンチに寝転がって挙げるのは違うが、ま要するに気分は“挙げられないほど重い”なんである。


ゆうべ雪だるまに「仕事に行きたくないよお!」と泣きついたら、「僕だって行きたくないよ。でも仕方ないでしょう? あと1年8ヶ月の我慢よ。今までもいやだいやだと言いつつ何とかなったんだから、あと1年8ヶ月も何とかなるよ」と言われてしまった。やっぱり出口はふさがれているのだ。


なんか勤労意欲が沸沸と湧いてくるような妙案はないかしら?

出口はふさがれている

  • 2009/11/04 15:54
  • Category: 雑記
いやな仕事を残しておくとますます出社意欲が衰えるので、朝一でいやな仕事を1件片付ける。こういう仕事を片付ける時は、何も考えない。頭空っぽにして別人格になって、ぺらぺらと信じてもいないことを喋りつづける。


他社に移ったところで企業である以上、状況は大同小異。仕事を辞めてしまえば、家賃が払えぬ。右もだめ、左もだめ。出口はふさがれている。いかにせん?

『スター・トレック』

  • 2009/11/03 16:15
  • Category: 映画
週末に『Star Trek』を見た。古い方ではなくて2009年制作のクリス・パインがキャプテン・カークを演っている方。雪だるまは60年代に放映されていたテレビ版スター・トレックを現役子どもで見ていた世代だが、私は今までスター・トレックのどの版もスター・ウォーズも見たことがなく、知識ゼロ。


しかし北米人にとってスター・トレックやウォーズは(アトムやどらえもんが日本で育った日本人にとっては基礎知識であるように)社会的基礎知識の範囲で、映画やテレビドラマでもしばしば引用されるので、1度実物を見てみたかったのだ。


で、見てどうだったかというと、私はドクター・スポックを大変たいへん気に入った。あのコンピュータ・プログラムのような論理的思考、その思考がそのまま音声になって流れ出したような正確無比な話し方、感情を退けようとするストイックさ。好きだー。こういう人と仕事するのは、楽ちんだろうなあ。だって理さえ通れば話が先に進むんだもん。状況把握正確だし。キャプテン・カーク? わたしあのタイプはどうでもいいのよ。“人間”のリーダーとして成功するのはあのタイプだろうけど、わたしはリーダーより参謀の方が好きなのだ。


ところで子どもの頃見たスター・トレックと比較しながら2009年版を見ていた雪だるまは、時代の違いを指摘。2009年版ではウーラとスポックの恋愛関係が暗示されるが、60年代のスタートレックでは、黒人女優演じるウーラが、白人俳優演じる他の乗務員と恋仲であるような描写はなかったそうである。なにしろ黒人と白人では異人種混交で、60年代の米国では州によってはそれは犯罪だったわけだから(米国の連邦最高裁が『異人種間の結婚禁止は憲法違反』の判決を出したのは1967年)


ん? ということは人間の社会は無知と偏見と差別をなくす方向に向かって、少しは進歩しているのか? わたしはしょっちゅう「人間は進歩などしない」という強い確信に捕らわれるのだけど、そうでもないんかな。

雪だるまの夢

  • 2009/11/01 09:30
  • Category: 雑記
土曜の朝、目覚める直前に雪だるまが見た夢;


雪だるまは数人の人たちといっしょに、どこやらのラウンジだかコーヒーショップだかに入った。みなでがやがやと座り、雪だるまの隣には日本人と思われる50年配の男性が座った。雪だるまは男性に日本語で「お名前は?」と聞いた。男性は「ドナルドです」と答えた。そのドナルドの発音は、まるっきりネイティブ英語話者の発音だった。雪だるまが「(日本人としては)珍しいお名前ですね」と言うと、男性は「でも苗字は“ありがとうございます”です」と答えた。


そこで目が醒めた。それだけの話。しかし名前が「ありがとうございます・ドナルド」って、どんな日本人や?

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プロフィール

らうとら

Author:らうとら
ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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