私のブロンド

さっき雪だるまの従弟の一人、たれ目ラファエルのステップファーザーであるところのCから電話があり、来週末に予定されている彼の両親の金婚式パーティは聖ジャンヌ・ダルク教会で行われると伝えられた。お1人様40ドルの会費徴収もあったことだし、てっきりどこかのレストランでやるのだと思っていた私は「あれ、教会ですか」とやや拍子抜け。ついで「ということは、巷で言う“2回目の結婚式”ってやつをやるのかな?」と埒もない推理を巡らした。

現在70歳前後のCの両親は当然ながら50年前に正式に結婚しており、したがって2回目の結婚式と言っても神父様を前に「互いに助け合い、仲よく暮らします」という誓いを新たにするだけで、別にもう1回役所に婚姻届を出すわけではないのだが、それでも2回目は2回目。最近のケベックでは(というか、たぶんカナダ全体で)結婚しないカップルが多いのに、その逆を行くわけだ。しないカップルは一度もせず、するカップルは再度する。面白いものである。

この「結婚していないカップルが多い」という事実、最初わたしは全く気が付かなかった。一緒に暮らしていて、しかも子どもがいたりした場合、別に深く考えることもなく結婚しているんだろうと思っていたが、実際のところ、子どもがいても結婚しているとは限らないのだった。たとえば最近子どもが生まれた雪だるまの別の従弟(警察官)も、その子どもの母親であるところの女性と正式には結婚していないそうだし、そもそも冒頭のCにしたところでラファエル姉妹の母親であるところの女性と正式に結婚しているわけではない。叔父さんの一人も某女性と一緒にいるが結婚はしていない。雪だるまのDVDキャビネットを作ってくれたG氏も長年一緒にいる女性はいるが結婚はしていないという。そのほかいちいち例を挙げていたらきりがないほどたくさんの“一緒に暮らしてはいるけど結婚はしていない”カップルがいる。カトリック教会の力が強かった1950年代以前なら考えられなかったことである。

日本では、内縁では配偶者控除の対象にはならないし、内縁の妻(あるいは夫)や子どもを扶養家族と認める企業も少ないと思うが、カナダでは婚姻関係にあるか否かで、税金や福利面に差が生じることはないそうである(注:雪だるま情報であって公文書で確認したわけではない)。そういわれてみると私がカナダ&ケベック政府あてファミリービザの申請をした時も、正式な婚姻関係にあることは必須条件ではなかった。つまり日本でいうところの内縁であっても申請できたのだ。この“差別なし”は子どもにも及び、嫡出子であっても非嫡出子(この用語、今でも使用されてるのかね?)であっても、相続その他の面において差別はないそうである。

まあ、だからこそのこの状況であるわけだが、おかげさまでケベックフランス語における“妻(femme)”と“夫(mari)”の使用頻度は甚だ低い。というか、ほとんど使用されない。代わりに使用されているのは、比較的公式な場では“conjoint/conjointe”、日常口語ではもっぱら“ma blonde:ガールフレンド/妻”と“mon chum:ボーイフレンド/夫”である。今スラッシュでガール(ボーイ)フレンド/妻(夫)と併記したように、この言い方だと婚姻関係にあるか否かは全く分からない。だからジムなどで顔見知りとお喋りしていて、そこに“ma blonde”の話が出てきても、それが彼の女友達なのか妻なのかは、突っ込んで聞かない限り永遠にわからないが、フランス語で喋っている限り、それで別段困らない。困るのはその内容を他の言語に(正確に)訳そうとする時だけである。英語のbrotherやsisterを日本語に訳そうとする時と同じだ。

ただmon chum はともかく、ma blondeという言い方をすべての女友達/妻に使うのは、私から見ると相当おかしい。この語は文字通りには「私のブロンド女」という意味であり、それをブルネットや赤毛や黒髪の女友達/妻に使うのはいかがなものか? 呼ばれた方は変な感じはしないのか? 百歩譲ってケベッコワ同士なら、まあもうお互い耳に馴染んでいるから(信号機の緑を“青”と言い、濃緑色のあの板を“黒板”と言うように)いいとして、たとえば髪は黒、どこをどう見てもアジア人の私を指して“ma blonde(私の妻)”とか“sa blonde(彼の妻)”とか言うのは、カラスを指して白鳥と言うくらいおかしいと思うのだが、いかがだろうか?

しかし私は聞いてしまった。ある日ある時、雪だるまが私を指して“ma blonde”と言っているのを。その時私たちはジムにおり、鏡にはいつもの通り真っ黒頭の私が映っていた。これでも“ma blonde”か?
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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