移民

そういえば毎月目を診てもらっているドクター・Sも移民である。一見してわかる中東系の顔立ちだし、雪だるまによればフランス語も流暢だが微かに訛りがあるそうだし、アシスタント嬢が「仏語と英語とアラビア語が話せる」と言っていたし、北アフリカあるいはレバノンあたりのご出身かもしれない。もうひとり眼科医への紹介状を貰うために診てもらった近所のクリニックのドクターも、やはりアラブ系のお名前&顔立ちだった。かつてフランスの植民地/委任統治領だったアルジェリア、モロッコ、レバノンなどでは今でもフランス語が広く普及しているせいか、フランス語圏であるケベックへの移住に抵抗がないようだ。すでに亡くなったが伯母さんのひとりの夫君もレバノン移民だった。その人は子供の頃に家族と共にケベックに移民した人で、フランス語、英語、アラビア語とあと何か1言語を流暢に話したそうである。

わが仏語教室を見てもわかるように、住民の9割以上をフランス系が占めているような田舎町のこのあたりですら、移民してくる者がいる。況やトロント、バンクーバー、モントリオールなどの大都市においてをや。10月末に発表された統計によれば、カナダ国民のおよそ5人に1人は自宅で公用語(英・仏語)以外の言語を使っているそうで、つまり少なくとも5人に1人は移民一世あるいは二世?、英・仏語圏からの移民と合わせれば、もしかして5人に2人くらいは移民一・二世? 
人口3500万で、毎年約26万人の移民を受け入れているそうだから、そういう比率になったとしてもおかしくはないが、まさに“多様性(diversity)”をその特徴とするカナダらしい現状ではある。(注記:自宅で公用語以外の言語を使っている=公用語は話せないではありませんので、念のため。上記ニュースを読んで誤解したコメントを寄せていた方があったので一応記します)


人は“移民”と聞くと、本国で食い詰め、先進国の豊かさのおこぼれに与ろうとやって来た低能力者集団、あげく(言葉や資格や差別の問題で)スキルの要らない低賃金労働くらいにしか就けず、あるいは全く就業することができず、結果さまざまな問題を引き起こし“社会のお荷物”となる厄介者、くらいに思いがちだが、当然ながら実際の移民の大部分はそうした存在ではない。そもそも移民がそういう社会のお荷物になるような人間ばかりだったら、どこの国も厳しい財政事情の昨今、わざわざビザを発給して受け入れるわけがないではないか。

もちろんどこの国にも不法に入国/滞留しているいわゆる不法移民はいるが、そういう人たちは別として私が個人的に知っている移民の大部分は真面目に働き、子どもを育て、社会の一員として立派にその責を果たしている。仏語教室で一緒のクラスメートたちについては、実のところお喋りがそこまで行っておらず詳しい状況は知らないのだが、家族でコンビニを経営する人、すでに働き始めていて授業を休みがちの人など、皆それぞれ自らの生活のため勤勉である。無料とは言え3時間の仏語教室に通ってくるくらいだから、もともと意欲的かつ勤勉な人たちが集まっているのかもしれないが、授業やゲームでの反応を見ていても皆なかなか頭がよく知識が豊富で、“無能で怠け者の移民”などという固定観念じみたイメージにあてはまる人など一人もいない。

だいたい今さら言うまでもないことだが、カナダは移民で成り立っている国である。早い話、first nationsと呼ばれている先住民の子孫以外、現在この国に住んでいる人たちはみないつかの時点でここに移り住んだ移民およびその子孫なのだ。雪だるまの友達のジョゼやドーン、KCやデイヴィッドなども彼ら自身はカナダ生まれでも、彼らの両親あるいは祖父母は移民だったわけだし、そもそも雪だるまにしてからがフランスからの移民の13代目、親戚一同みな移民の子孫。移民が社会のお荷物の劣等市民であったら、カナダは成り立たない。

ただ年ごとの移民の増加で、現在は以前に比べ状況が厳しくなっていることは事実だ。どこで読んだのだったか失念してしまったが、1980年以前に移民した人に比べ、移民数が増えて競争が激しくなっている現在は、移民後の経済的、社会的成功のチャンスが減っているそうである。したがって今後は、たとえ真面目に努力したとしても苦境から抜け出せない移民が増える可能性はある。もっともこれは移民に限ったことではないけれども。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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