朗読サイト

  • 2013/02/02 23:07
  • Category:
アイスバーンが怖くて洗車の予約をキャンセルし、学校も休みになった水曜、ひょんなことからたくさんの、たくさんの日本語による朗読サイトを見つけてしまい、その日もその翌日も悪天候でジムにも散歩にも行けず1日中家に籠りきりになったせいもあって、もう憑りつかれたように聞いて聞いて聞きまくった。

夢野久作の「いなか、の、じけん」「奥様探偵術」「夫人探索」「縊死体」、芥川の「素戔嗚尊」「煙草と悪魔」「魔術師」「お富の貞操」「六の宮の姫君」「藪の中」「河童」「鼻」、岡本かの子の「鮨」(途中まで)のほか、海野十三、小栗虫太郎、妹尾アキ夫等々、いったい何本聞いたのかわからないくらい聞いた。

こんなに夢中になって聞いたのは、何本目かに聞いた「お富の貞操」の読み手、坪井祐実さんの朗読があまりに見事だったからだ。最初は別の方の朗読で聞き始めたのだが、サイトの具合が悪いのか途中で止まってしまったので、特に考えもせずその下にあった坪井さんの朗読に切り替えた。そして思わず編み物の手が止まったほど驚いた。冒頭のほんの1、2行だけで、くっきりと情景が立ち上がり、凛と空気が澄んだのだ。声の違いなのか、発声や抑揚、間の取り方の違いなのか、私は朗読については何も知らないので、この違いがどこから来るのか「こう」と指摘はできないのだが、違うことだけははっきりとわかる。ぐいぐい引き込まれて、延べ40分ほどのこの作品を一気に聞いた。ついで「六の宮の姫君」を聞いた。こちらも見事だった。美しく、やさしくはあるが流れに身を任せるだけで自らは何もしない六の宮の姫君の不甲斐なさ、それゆえの哀れさが、自分で芥川の文章を読んだ時以上に、こちらに伝わってきた。

ここに至って私にもようやく、朗読というのは単に文章を音読することではないのだとわかった。朗読とは声だけを通して演じられる、たった一人の芝居なのだ。台本を渡された俳優と同じように、朗読者は本を読み、解釈し、その解釈を元に役を演じる。お話によっては一人で何役も演じる。表情や身ぶりといった身体表現は使えず、頼れるものは声だけ。声だけでお話の世界を構築し、聞き手を引き込んでいく。

―― ただ、だから一方では聞き手はその朗読者の解釈を通しての芥川なら芥川、漱石なら漱石を聞くことになるわけで、見方によってはその朗読者の解釈を押し付けられているとも言えるのだが、ある人の朗読/解釈が自分とは異なると感じられる場合は別な人の朗読/解釈で聞くか、あるいは(可能ならば)自分で本を読めばいいわけで、この点音楽よりは楽かも。(ある指揮者/演奏家の演奏が気に入らないからといって、スコアを取り寄せて“読んで”も、大方の人は頭の中で音楽が鳴ることはあるまい) ――

話がちょっとそれたが、坪井さんの朗読に惚れ込んだ私は次々と彼女の朗読で芥川を聞き、しかしあんまり聞きすぎて夜半に至って少々疲れ(芥川の作品は、“軽い”とは言いかねる)、気分転換に夢野久作の「奥様探偵術」に飛んだ。こちらも大ヒット。朗読は林田雅美さんとおっしゃる、プロナレーター、声優、俳優グループである「DNA計画」に所属する方。この作品にぴったりの甘い声と達者な演技で、思わず口元がゆるんだ。惜しむらくはサイトの不具合か、朗読がたびたび途切れる。これさえなければほんとに最高なのだが。

このほか“えぷろん”さんや、『猫の足音』のmokoさんなども、玄人はだしの朗読で大いに楽しませていただいた。おかげでこの3日間、私は時ならぬ“日本近代文学祭り”状態である。こんなに集中的に明治~昭和初期の日本文学に親しんだことは、かつてない。

以下、若干の朗読サイトのご紹介(敬称略)
『しみじみと朗読に聴き入りたい』の朗読アーカイブス http://homepage2.nifty.com/to-saga/roudoku2.htm#archive
『坪井祐実の~声の空間~』 http://www.voiceblog.jp/hana-sumire24/
『DNA計画作品集』 http://www.voiceblog.jp/dnakeikaku2005/
『えぷろんの朗読本棚』 http://epuron-rodoku.seesaa.net/
『朗読☆猫の足音』 http://www.voiceblog.jp/catlove/

*サイトによっては時々、あるいは頻繁に朗読が途切れますが、お腹立ちなさいませず気長にお聞きくださいませ。
スポンサーサイト

Pagination

Trackback

Trackback URL

http://gaudynight.blog.fc2.com/tb.php/1390-e4f79d97

Comment

Post Your Comment

コメント:登録フォーム
公開設定

Utility

プロフィール

らうとら

Author:らうとら
ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

カテゴリー+月別アーカイブ

 

FC2カウンター