R君

週2回の学校通い、いつもまだ免許がないR君を乗せて一緒に行っているのだが、何しろ2人ともフランス語が不自由、R君は英語が喋れず、私はスペイン語が喋れないと来ているので、10分ちょっとの道中は、いつもかなーり静かである。それでも時々、知ってる単語を総動員して、お喋りを試みる。

それによるとR君は27歳。今年1月にキューバから当町に来た。今はケベッコワ―ズの奥さんと、奥さんのお母さんと3人で暮らしている。来た当初は当然仕事がなかったが、3月からダウンタウンの小ホテルで働き始めた。週3~5日、1日6~8時間の勤務で、仕事は客室の掃除と整備である。客がチェックアウトしたあと、1部屋40分でシーツ換え&ベッドメイク、浴室含めた部屋全体の掃除と備品の補充を1人でやるのだそうである。部屋はツインだから、40分で全部済ませるのは結構忙しいと言っていた。時給は10ドルちょっと。

キューバでは警察官をしていたというR君にしてみれば、特別な技術も能力も要らず、学生の小遣い稼ぎ程度の収入にしかならないこの仕事は満足のいくものではないだろうが、とにかくフランス語が喋れないうちは仕方がない。まだ若いのだから、これから十分なフランス語を身に着け、本来持っている能力を発揮、あるいは当地で需要のある新たな技術を修得し、かつその時ケベック/カナダの景気がよければ、もう少し将来性のある仕事に就ける可能性は十分あるだろう。それまでは我慢して、できることをするしかないのである。

それに、たとえ当地では学生アルバイト程度の収入でも、それをキューバに送れば家計の足しになる。R君によれば故郷にはお母さんと兄弟姉妹、耳の不自由な姪がいるのだそうで、貧しい暮らしだからR君が働いた中から仕送りして助けるのだそうである。R君のお母さんは(R君のフランス語に間違いがなければ)42歳だそうで、えらい若いお母さんなのだが、先週電話した時には風邪をひいていたとかで、R君は心配していた。

R君は他のラテンアメリカから来た生徒に比べ寡黙で内省的な性格に見え、ことに仕事がなかった間は、義理のお母さんと1日中家にいる生活(R君の奥さんは働いている)が何とも気づまりなようすだったが、仕事ができてから幾分表情が明るくなった。R君が何を期待してキューバからケベックに来たのか、そういう込み入った話は互いのフランス語力が災いしてできないのだが、27歳ともなれば甘い夢だけ見て当地に来たはずもなく、また実際、現実はそうそう新移民にやさしいわけでもない。南米はじめ経済的に遅れている国、あるいは政情不安定な国の出身者とケベッコワとの結婚には「どうせ永住権目当てだろう」といった偏見もある。移民で成り立っている国でも、新移民の生活は容易ではない。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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