引き続き胸の話

  • 2013/07/09 09:36
  • Category: 言葉
マンモグラフィに行った翌日、ジムに行ったらちょうど散歩友達のマダムBも来ていて、「サリュ!」と寄って来た。そして私にわかるよう英語/仏語まぜこぜで話し始めた彼女によると、彼女が通っている英語教室では先日、身体に関する語彙や表現を学んだのだそうだが、途中で彼女が「女性の胸のことは何というのか」と尋ねたら、講師の女性は突然固まってぎこちなくなり、小さな声でぼそぼそと「後で、教室が終わったらお教えします」と彼女に言って、その場では答えてくれなかったそうなのである。

マダムBは「教室って言ったって、生徒は大人の女性ばかり3、4人いるだけなのよ。何が問題なのよ?」とぶーたら言い、「たとえば医者に診てもらう場合とか、そういう単語は必要でしょう」と言い募って、ちょうどそばにいた雪だるまにも同じことをフランス語でまくし立てていたが、実は彼女の行っている英語教室は、モルモン教会がやっている英語教室なのである。彼女自身は別にモルモン教の信者というわけではなく、単に近くに他の手ごろな教室がないからそこに行っているだけなのだが、「入信のお薦めはしない英語を学ぶためだけの教室」とは言っても、そこはそれ、講師は米国あたりから来た伝道師が当たっており、彼らは教会の教義が身に沁みついているので、時折今回のように一般人から見ると「はあ?」というような行動/反応になってしまうようなのである。(何しろ信徒用として胸元から膝上まで覆う、ヴィクトリア時代並みに露出を抑えた白綿の専用下着があるくらいのモルモン教である。よく言えば慎み深い、悪く言えば・・・   まあ、言わんとこ)

雪だるまは「ほんとにヘン!」とぶーぶーしているマダムBに「モルモン教に限らず、宗教は性に関することには保守的な場合が多いから。ケベックのカソリックだって、40、50年前までそういう言葉は人前では口に出さなかったでしょう」という意味のことを言い、マダムBの「で、英語では普通なんて言うの?」という問いに対し「Breasts」と答えていた。

私は逆にマダムBに「フランス語では何て言うの?」と聞き、マダムBは懇切丁寧に「片方/ひとつの乳房だったらSein、両方ならSeins、(注:発音は同じ)、胸部という場合ならPoitrine、お店でブラとか買う場合はBustと言ったりもするわね。英語から来てるのかもしれないけど」と教えてくれた。聞いた私は「そういえば学校では、Poitrineは習ったけど、Seinsは習わなかったな」と思った。マダムBのおかげで、覚えられてラッキー。

それにしても、たとえ語学教室という場であろうと、乳房という言葉を口に出せないその講師の女性は、どんな世界に生きているのだろうと考えると面白い。私自身は、事物事象を表す言葉自体には良いも悪いもない。基本的に言葉は中立的なものだと考えてはいるが、一方で耳に心地よい/悪い言葉、話者の価値判断を含んだ言葉(中国語でいう褒義詞、貶義詞)、上品な言葉/卑俗な言葉があることも事実で、口にしづらい、あるいは自分の文章の中では使いたくない言葉というのも確かに存在する。だから、ある特定の言葉を口に出せないという彼女の気持ちがわからないわけではないが、それにしても今回の場合、その特定の言葉は「乳房」である。詩にも小説にも、しょっちゅう出てくるんだがなあ。モルモン教徒にとっては、この語ですら“淫ら”なのかなあ。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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