『Ernest et Célestine』

  • 2013/09/23 11:25
  • Category: 映画
Pixarやディズニー、ジブリなどの作品を見ていると、CGのおかげか風景/背景の描写がますます緻密になってきていて、特に水、川や海を描写する表現力には本当に感心する。ファンタジー系のアニメだったりすると、月光の下、細かい波が立ち、銀片を散らしたようにきらめく川面や、バイキングの船が行く北の海の、重さを感じさせる冷たく深い藍など、本物以上に本物的で、それだけでぐうんと惹き込まれるが、惜しむらくはオハナシが今ひとつ。アニメはだいたい子ども向けだから、勧善懲悪ハッピーエンドのわかりやすいお話になるのはやむを得ないところであるのだけれど、どれもこれも少年成長物語(何らかの欠点がある少年または少女が、課せられた使命の達成に向け友達の助けを借りつつ数々の困難を乗り越えることにより成長する)のバリエーションなのは、いかがなものか。特に米国物だと主人公や主人公を取り巻く脇役のキャラまでほぼ同じ(自信がなく消極的な主人公と、鼻っ柱の強いオトモダチ)で、時代や舞台設定は違っても、中身はほとんど金太郎飴。おかげでどれを見て、どれを見ていないのだが、わからなくなる。

そんななかで一昨日見た『Ernest et Célestine』(2012年 仏・ベルギー)は、ちょっと表現の方向が違っていて面白かった。ベルギーの作家兼イラストレーター Gabrielle Vincentによる同名の絵本をアニメにしたものらしいが、まず絵がほのぼのの可愛らしい。いかにもCGといった実写そこのけの精緻な絵ではなくて、水彩画をそのままアニメにしたような、やわらかな色と線。
それが地下のネズミの国に住むネズミの女の子 Célestineと、地上の熊の国に住むフーテンの寅さんみたいなクマErnest との交流を描いたこのお話にふさわしく、見ているこちらまでやさしい気持ちになる。


ernest-et-celestine.jpg

ゴミ缶の中で眠ってしまったCélestine



ernest_et_celestine_2.jpg

大道芸人(?)Ernest


ストーリーはまあネタバレになるので書かないが、Célestineが暮らす孤児院の、やたら天井が高く、どどーんと広い部屋に小さなベッドがたくさん並んでいるようす、そこでちょろちょろ動き回る寝間着姿の子ネズミたちの愛らしさ、地上は熊の国のはずなんだけど、街並みはなんだかパリみたいで、そこを歩いているクマは洋服を着ていて、クマのマダムに至ってはお帽子も被っていて、なんだかちょっとお洒落なのだ。そしてネズミとして真っ当にして唯一の職業である歯医者じゃなくて絵描きになりたいCélestineが、心のままに描く絵もなかなかすてきなのだ。

米国アニメがチョコチップクッキーだとすれば、これはドラジェかマカロンか。
繊細にして軽やか。
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Comment

やまけろ

おお!おおお!このアニメ!フランドル地方の旅行番組で、タンタンとかミッフィーとか有名キャラクターアニメばかりの中、一瞬チラっと、この手描きな風景が映ってました。タンタンのアニメはCGじゃなくて、こういうので是非やって欲しかったと思ったので印象的で。

らうとら

なんと、ちら見でよく覚えていらっしゃいましたね。CGもいいけど、こういう柔らかい色彩の、水彩画のようなアニモも、しみじみいいですよね。私もタンタンは「ここまで実写風にしてしまったら、アニメで制作する意味ないじゃない?」と、かなり残念でした。技術としてどこまでやれるか試してみたい気持ちは、わからなくはないですが。
  • URL
  • 2013/09/25 08:17

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らうとら

Author:らうとら
ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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