医療の話 1

そういえば手術を2回した話は書いたが、その手術が2回とも全く無料だったことは書かなかった。意図して書かなかったわけではなく、話がそっちに行かなかっただけなのだが、ケベックでは基本的に医療費は無料なので、手術も当然無料なのである。これは私のように無職で収入のない者には大変ありがたい。いろいろ弊害もあることはわかっているが、医療を受ける当事者になってみると、費用の心配をせずに治療を受けられるのは、本当に有難いと思う。

医薬分業なので医師の処方箋により薬局で買う薬は無料というわけにはいかないが、政府により価格が統制されているのか、むやみに高いというようなことはない。たとえば先月から始めたホルモン治療用のApo Tamox(タモキシフェン)20mgは、1か月分15錠で13.69カナダドル(約1300円)である。(注:毎日飲むのに1か月分で15錠なのは、私の場合1日の服用量が10mgなので、1錠を半分に割って服用しているため。そういうケースが多いのか、薬には最初から真ん中に切れ目が入っている)

そして再来週くらいからは放射線療法も始まるが、これも費用はかからないはずである。まだ詳しい話を聞いていないのではっきりとは言えないが、部位は違うが同じく放射線療法を受けた叔父さんも有料だとは言っていなかった。フォローアップのための3、4か月に1度の検診も医師との面談も、もちろん無料である。つまり私は今後、1か月約14ドルの薬代以外、特に大きな費用負担なしに治療を続けていくことができるのである。これを有難いと言わずして、何と言おうか。

ただ、この有難い制度にも問題がないわけではない。まず、緊急の場合以外、なかなか診察の予約が取れない。ケベックには特定の医師を主治医/家庭医(family doctor)として登録する制度があり、私の担当は近所のクリニックのドクター・Cなのだが、こうして主治医がいても緊急でなければなかなか即日には診てもらえない。前々回、手術の2週間後に傷口から出血し始めて慌てた時も、ドクター・Cに電話したのが月曜、予約が取れたのが水曜。担当の主治医がいても2日後だったのだから、いない場合はもっと時間がかかるわけで、というかそもそも予約が取れないので、診てもらいたければ朝からクリニックに並んで番号取りをするしかないのである。(私もドクター・Cが主治医を引き受けてくれる前は、これをやった) あるいは病院の緊急外来に行って、ひたすら待つか。

教室で喋っていて知ったのだが、クラスメートの大部分は新規移民者なので主治医がおらず、したがって具合が悪い時は直接病院の救急外来に行くそうだ。行って、診てもらえるまでひたすら待つ。そうやっている一人、近所に住む許さんによれば、前回風邪をひいて病院に行った時には、朝9時頃行って、診て貰えたのは夕方4時過ぎだったそうである。受付の際の問診、検温等により、さほど緊急ではないと判断されたためらしい。待っている途中でもう一度、大丈夫かどうか確認されたが、幸か不幸か大丈夫だったので、順番が繰り上げられることなくそのままひたすら待ち続けることになったそうで。

教師であるジョゼのお嬢さんが怪我をして救急外来に駆け込んだ時も同様で、待合室で何時間も何時間も待たされたそうである。ただしジョゼの場合は痛みでお嬢さんが泣き出しそうな様子になったので、やむを得ず隣の市の私立のクリニック(=有料)に走ったそうで、まあこれはある程度の経済力があるからできることではある。

ジョゼによれば、病院がこんなに混んでいるのは、診療が無料であるため、本来なら診療が必要ではない人まで病院に行く、あるいは健康を気遣うことなく不摂生な生活をした挙句、病気になって病院に駆け込む人が多いためで、そのために本当に医療が必要な人は医療を受けられないという憂うべき状態になっているのだという。

ジョゼの説の真偽は別として、そういえば昔日本でも病院の待合室が老人たちの社交場となり、たまに常連の誰かの姿が見えないと「あれ、今日は××さんがいないね。具合でも悪いのかね?」と言い合うという冗談があったが、ここケベックの田舎でも同様のことが起きているのだろうか?
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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