医療の話 2

前回の話の続き。
新規移民者であるクラスメートの大部分は、主治医/家庭医(family doctor)を持っていないと書いたが、その理由はカナダの医師は勤務医も家庭医も基本的には保険医で、政府から給料が支給されているので、担当患者が増えたからと言って給料が増えるというわけではない。よってある程度の数の患者を抱え、既存の患者だけで十分忙しい家庭医は、新規の患者を受け付けたがらないためであるという。

これは別に移民に限ったことではなくて、ケベッコワでも同じ。たとえばクラスメートのペネロピの夫君はケベッコワだが、以前は数十キロ離れたV町に住んでいた。V町では家庭医がいたが、こちらに引っ越してからは家庭医を引き受けてくれる医師が見つからず、ここ2年ばかりは家庭医なし状態。当然ペネロピも家庭医なし。去年、別の町に引っ越したマリソルたちも同じ。以前住んでいた町には家庭医がいたが、今住んでいるところにはいない。2つの町の間に横たわる距離は約40km。カナダ人にとっては“ほんの隣町”の距離だが、具合の悪い時に山を越え、谷を越え40km走るのは、なかなかしんどいものがありそうだ。

私と雪だるまの場合は、まず数年前にお義父さんが自身の家庭医であるドクター・Cに「息子も引き受けてもらえないか?」と頼んでOKを貰い(当時、雪だるまは香港在住だったが、毎年夏休みに帰省してカナダで定期検診etc.を受けたりしていたので、家庭医登録の必要があった)、次に今度は雪だるまが「妻も引き受けてもらえないか?」と頼んで、これまた運よくOKを貰えたので、義弟ジェリーを含め、一家全員ドクター・Cの患者ということになっているが、これは結構ラッキーなケースなのかもしれない。

家庭医を引き受けてくれる医師を見つけるのが難しいこと、診察の予約がなかなか取れないこと、病院の救急外来での待ち時間が非常に長いこと。どれも、ここ何年も新聞その他で問題になっていることである。

診察を受けたいのに受けられないという問題を解決するひとつの案として、ケベックでは数年前から私立クリニックの開設を認めるようになったが、私立であるからもちろん有料だし、経営が成り立つ患者数が確保できなければならないから、どこにでもあるというものでもない。実際、人口13万の隣の市にはあるが、人口5万のウチの町にはない。

公立病院(無償または安価)と私立病院(有料)が併存し、患者は自身の病状の緊急度および懐具合に応じてどちらに行くか選ぶというのは香港でお馴染みの方式で、私はこれはこれでなかなか悪くない方式だと思っているのだが、雪だるまに言わせると、この方式では結局、有料の私立病院の方に優秀な人材や最新鋭の設備が集まってしまいがちで、経済力の格差が医療の格差につながってしまう。それでは問題の解決にならないと言う。

そうしてみると、日本の国民皆保険だが自己負担はあるという方式は、なかなか悪くない方式なのかもしれない。たとえ3割にしろ自己負担があるという点で、少しは自身の健康管理に気をつけるし、それでも病気になってしまった場合は病院または医院に行けば、(日本の病院での待ち時間も結構長いが)たぶんその日のうちに診てもらえる。手術、入院等で医療費が嵩めば、高額療養費の払い戻しという制度もある。国保は長年赤字だし、日本の皆保険制度も問題山積で、いつまでこうした制度を続けられるのか定かではないが、間違っても米国のようにはなって欲しくないと思う。オバマケアで多少はましになったようだが、自由診療が基本で、各個人がそれぞれ民間の保険会社と契約して高額な医療費の負担に備えるという米国の方式は、徹頭徹尾強い者に有利で、弱い者はそれこそ情け容赦なく切り捨てられておしまい。自由競争も民営化も結構だが、医の目的は営利ではなかろうに、と思わずにはいられない。
スポンサーサイト

Pagination

Trackback

Trackback URL

http://gaudynight.blog.fc2.com/tb.php/1556-fe1f16fc

Comment

Post Your Comment

コメント:登録フォーム
公開設定

Utility

プロフィール

らうとら

Author:らうとら
ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

カテゴリー+月別アーカイブ

 

FC2カウンター