窓ガラス拭きなんか大嫌い

私は窓ガラス拭きが大嫌いだ。これくらい面倒な割に報われない仕事もないと思っている。たとえば他の掃除や皿洗い、洗濯はやればやっただけきれいになり、成果が明らかに見えて気分がよいが、窓ガラス拭きはやったからといってきれいになるとは限らない。どんなに丁寧にやったつもりでも、必ずどこかに拭き残しや乾拭きの跡などが残り、太陽の光でも当たろうものなら、いやになるくらいはっきりとその不出来ぶりを見せつけてくれる。それに苛立ち、むきになって力任せにこすったりすると、タオルの毛羽立ちまでガラスに付着したりして、本当に目も当てられない。努力の程度と成果が正しく比例しないのが、ガラス拭きなのだ。

おまけに徹頭徹尾、人力だ。この100年、家事労働は著しく機械化が進んで、掃除は掃除機あるいはお掃除ロボット(ルンバちゃん)、洗濯は洗濯機&乾燥機、調理は(したくなければ)種々の冷凍食品や半調理品、出来合いのお総菜やお弁当を電子レンジでチン!など、人がやることといったらそれぞれの機械のスイッチを押すだけ、と言っていいほど目覚ましい勢いで省力化が進んでいるというのに、窓ガラス拭きだけは相も変わらず100年前のまま。“人間”が“手”で、1枚、1枚拭いている。ほとんど産業革命以前である。そもそも現代技術の象徴のような超高層ビルですら、窓拭きは人力ではないか。例のドバイのブルジュ・ハリファですら、一部清掃用無人機械があるものの、基本的にはゴンドラや吊り籠に乗った清掃人が人力で拭くのだそうである。建築技術は21世紀でも、窓拭き技術は中世(あるいはもっと前)のままというところか。

さてその人力による窓ガラス拭きだが、その方法としては「濡らした新聞紙で拭くのが最良」とか、「半乾きのタオルがベスト」とか、「スクイージ+タオル 1分で完了!」とか、さまざまな“これがベスト”な拭き方が、さまざまな家事サイトに載っているが、実際に試すとどれも今ひとつ。やり方が悪いのか、はたまた私には先天的に窓ふきの才能が欠けているのか、拭いている間は「お、きれい、きれい」と思えても、拭き終わってからちょっと離れて見てみると、あちらこちらにうっすらと拭き跡が透かし見え、心底がっかりする。

第一この記事にしてからが、今朝デッキに出るフランス窓、夏場ウチの中でもっとも頻繁に使用する出入り口、のガラス拭きを始め、やってもやってもきれいにならないのにうんざりして書き始めたのである。今日使ったお道具は薄い洗剤液とスクイージ、タオルだったが、拭いても拭いてもどこかに拭き跡が残り、すっきりしない。実に腹立たしい。

それに寒さの厳しい土地ゆえ当地の窓はみな二重窓なのも、面倒さに一役買っている。上記フランス窓も例外ではない。私は昔、二重窓というのは内側と外側に1枚ずつ窓があるのかと勘違いしていたが、少なくとも今、当地で一般的な二重窓は、窓枠に内、外2枚のガラスを嵌め込む形式で(2枚のガラスはぴったりくっついているわけではなく、1cmほど開いている。複層ガラスというそうである)、窓が2枚あるわけではない。この窓枠に嵌め込まれた2枚のガラスは当然嵌め殺しで、個別に動かせるわけではないから、それぞれ外側は拭けても内側は拭けないということになる。嵌め殺しの2枚の窓ガラスの内側など汚れるはずはないので、それで問題ないはずなのだが、どういうわけだか時々、パッキングの隙間から雨水や汚れが入り込むことがあり、内側に染みを作る。こうなると、もういけない。掃除できない内側にできた染みは、こちらを嘲笑うかのように永遠にそのまま。手が届かない口惜しさに、窓拭きの度に苛々することになる。まったく腹立たしい。

もうひとつ、嵌め殺しの窓が多いのも当地の特徴だ。日本と香港でしか暮らしたことのなかった私は、「窓は開くもの」と思い込んでいたが、当地に来て開かない窓の方が多いことにびっくりした。当地では窓は採光のためのものであって、換気のためのものではないらしい。たとえばフランス窓の両側の窓は2つとも嵌め殺しで、まったく開かない。主寝室の窓も、窓自体は3m×2mと大きいが、開くのは端の1か所だけで、40cmほどの幅でドアのように外側に向かって最大90度開くだけである。浴室、客用寝室も同じ。

こうなると1階はともかく、2階の窓は内側しか拭けないということになる。2階の窓に届くほどの梯子はウチにはないし、あったとしてもそんな高い梯子に登って窓を拭くのなんか絶対にいやである。この窓の構造は他のうちでも同じと思われたので、叔母さんの一人にいったいどうやって窓の掃除をするのかと聞いてみたら、2階の窓まで届くよう水圧が強くなるようなホースヘッドをつけて、外からシャーシャー水をかけて洗うのだそうである。確かに一般家庭ではそれ以外、妙案があるとは思えない。もっとも引っ越して約3年、私はこの方法を実行したことはないのだが…
なんといっても冒頭に書いた通り、私は窓ガラス拭きが大嫌いなのである。届きもしない窓なんか、3年くらい拭かなくたって死にはしない。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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