田舎暮らし

  • 2014/07/08 04:57
  • Category: 雑記
書くほどのことがないからと間を置けば置くほど、日本語が出て来なくなることに気付いたので、格別の事件はないが書くことにする。

この、ブログの話題に事欠くような平穏かつ単調な生活になって3年、脳の軽量化が進み過ぎてほとんど空っぽに近くなっているという問題を別にすれば、私はこの“何も起こらない”日常を楽しんでいる。昔、まだ仕事をしていた頃、お客様の一人に「仕事を辞めてカナダの田舎に引っ込んだりしたら、退屈で死んじゃうんじゃありませんか?」と言われたことがあったが、その時の私の答え「いいえ、そんなことはないと思いますよ」の通り、3年経った今でも私は退屈のために死んだりはしていない。むしろ意に染まない仕事をしなくてもいい気楽な生活を、大いに楽しんでいる。

たぶんそのお客様から見ると、香港の金融会社で働き、あちこち出張していろんな企業の経営者と会ったり、プレゼンしたり、ツアコンとして通訳したりする毎日は、エキサイティングで面白く、やりがいのある日々であるように思えたのだろうが、私自身は全くそのように感じておらず、そういう毎日を楽しいとも思っていなかったので、仕事を辞め、田舎に引っ込むことに何のためらいも感じなかった。そして今も、全く同じ気持である。唯一、視力の悪化で翻訳のバイトが続けられなくなり、収入ゼロになったのは少々痛いが、まあ大して金のかかる生活をしているわけではなし、あと数年は何とかこのままで行けるだろう。数年後のことは、またその時考える。うまくいけば、事故か何かでこの世とおさらば出来ているかもしれないし。

もっとも私が田舎の“何も起こらない”生活を楽しんでいられるのは、私が都会でしたかったこと、仕事や遊びを日本と香港でほぼし尽くした50代だからかもしれない。ジンセイの本番はこれからという20代、30代、仕事も遊びもし足りない若者がここの生活に放り込まれたら、何の刺激もない毎日、やりたいことが何もできない生活に、不満と焦燥で爆発しそうになるかもしれない。20代のワカモノに鳥を眺めて暮らせと言うのは、土台無理な注文なのだから。

たとえば冬の終わりに一緒に食事をした隣町に住む日本人女性Fさんは、ここでの生活に半ば以上うんざりしている様子だった。カナダの田舎での生活が、100%嫌だというのではない。しかしここに住んで10年、家にいて子どもを育てているだけで、仕事もないし、特別に親しいという友人もいない。映画や芝居、コンサートが、よりどりみどりに提供されているわけでもないし、近所にはウォ○マートと小さいモール、食品スーパーくらいしかないから、ショッピングの楽しみすらない。あらゆるモノ、娯楽にあふれていた東京育ちの彼女にしてみれば、これは辛いだろう。おまけに1年の半分は冬で、ウィンタースポーツ大好き!というのでもない限り、屋内に閉じこもった生活になる。このままここで、何もできないまま/しないまま老いて行くのか・・・と考えたら、暗澹たる気持ちになるであろうことは想像に難くない。

日本人だけではない。キューバから来たKも、パートタイムの仕事はしているがここでの生活をつまらないと言い、頻繁にモントリオールに息抜きに出かけている。片道150km、往復300kmの距離は近いのか、遠いのか。

田舎の生活は基本的に閉空間だ。いくらインターネットが発達しようと、そこで提供される情報、娯楽はバーチャルで、現実の生活、人間関係は狭い範囲で閉じている。週一で配布されるフリーペーパーの紙面の8割は、事故、死亡、誕生など近隣4、5市町村の話題で埋まっているのだ。毎日、毎日、同じ顔を見、同じ言葉を交わしながら、ずっと暮らしていく。毎日同じ顔を見ているのは都会でも同じだ、と思うかもしれないが、都会ではある個人が属するグループ自体は小さくても、そうした小グループが無数にあるし、グループ構成員の移動も激しい。限られた数のグループしかなく、構成員の移動も少ない田舎とは違う。いろいろやりたい盛りの20代、30代の人が、こうした毎日に満足して暮らしていくのは、容易なことではないと思う。
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Author:らうとら
ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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