『7 cajas』

  • 2014/12/14 23:03
  • Category: 映画
パラグアイの映画『7 cajas』(英題 7 boxes)を見た。たとえ悪事を働くにしても、最低限の頭と知識は必要だと、つくづく感じた。それくらい、この映画に出てくる人物たちは、どれもこれもため息が出るくらい間抜けだった。あまりにも救い難く抜けているので、途中で見ているのが嫌になって、半分程で席を立ち、台所でもやしの髭取りを始めたくらいである。雪だるまは見続けていたが、私は見続けることが出来なかった。

途中までしか見ていないからはっきりとは言えないが、話の大筋は、ある男が仲間2人と共に身代金目的の誘拐を企てる。誘拐の対象は自身の妻である。妻の父は金持ちなのだ。しかし、いざ誘拐してみたら、妻は恐怖のためかショックでか、誘拐の途中で頓死してしまった。困ったのは男3人である。死体を持て余し、とりあえずは仲間の一人である肉屋の巨大冷蔵庫に隠してみたが、どうやって始末したらいいのかわからない。どたばたしているうちに、別件で警察が肉屋に来たりして、慌てふためいた肉屋は符牒を取り違え、金を7つに分けろと言われたのを、死体を7つに分けろと言われたのだと勘違いして、死体を切り刻んでしまう。(なにしろ肉屋だから、この辺はお手のものだ)また、死体を入れた箱の始末を頼まれた別の男は、箱を渡すべきではない相手に渡してしまい、ためにもともと箱を受け取ることになっていた男は「仕事を取られた」と頭に来て、その箱を受け取った相手(荷物運びを仕事にしている少年)を追い回す。少年は逃げ回る。その途中で、箱の中身は金だと勘違いした男は、街のチンピラグループを雇って少年を追わせる。少年、ますます逃げる。というようなドタバタが、掘立小屋のような店屋が立ち並ぶパラグアイの市場を舞台に繰り広げられるのである。しかもこれだけ馬鹿馬鹿しいドタバタでありながら、コメディではないのだ。登場人物みな真剣に追い駆け、真剣に逃げ回り、なけなしの頭で策を弄し、それぞれがそれぞれの相手から請け負った仕事を完了させて約束された金(そう、目的は常に金だ)を受け取ろうと、必死に動き回るのである。

画面からでさえ、パラグアイの貧しさと貧富の差、良いとは言えなそうな治安などはありありと伝わってくるのだから、この映画を見ての感想が「悪事を働くにも、最低限の頭と知識は必要だ」であるというのは間違っているとは思うのだが、しかし本当にそれしか頭に浮かばないほど、登場人物たちは目先1メートルのものしか見ておらず、不確かな情報から誤った結論を出し、先のことを考えずに行動を起こして、ますます事態を悪化させていくのだ。見ていて絶望的になる。

学校で習うような知識など、無くても世の中を渡って行くことはできるし、立派に生きている人たちもたくさんいるだろうが、どうも私は知識重視、論理および理性重視の世界で生きてきたせいか、知識はないよりある方がいい、教育(知識を得ることと考える訓練)はないよりある方がいい、と思えてならず、その双方が欠けた状態は悲惨(misère)と思えてならないが、そんな風に考えるのは知識偏重にして傲岸不遜な教養主義に過ぎないのだろうか。しかしそうは言っても、欧米や日本のような俗に“先進国”と言われる国でも、またこの映画の舞台であるパラグアイのような“発展途上”と言われる国でも、知識の多寡、考える能力の高低は、その人の人生を左右するように思えてならないのだが。どこか別の映画でも言っていた「(移民が)現在の境遇から抜け出すには、教育を受けるしかない」と。教育だけで(現在の悲惨な)境遇から抜け出せるとは限らないが、教育が脱出の第一歩であることは確かで、というか、とっかかりはそれしかないのだ。何も知らない、何もできないでは、どこにも行き着かないのだから。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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