Xavier Dolan

  • 2015/01/10 01:21
  • Category: 映画
今朝はマイナス30.7℃。ショールがあっても、肩先が寒かった。ああ、ケベックの冬。

ところでそのケベックに Xavier Dolan という監督兼俳優がいる。1989年生まれというから、まだ25歳。俳優としては子供の頃から活躍しているが、私が彼に注目し出したのは彼の監督第一作“J'ai tué ma mère(I killed my mother)”(2009年)を見てからである。そして二作目の“Les Amours imaginaires(Heartbeats)”(2010年)で静かな興奮に胸をどきどきさせ、三作目の“Laurence Anyways”(2012年)で、「この監督は面白い」と確信。その確信は四作目の“Tom à la ferme(Tom at the Farm)”(2013年)でも裏切られず、だから今こうしてこれを書いている。

彼が描くのは常に人間関係だ。“J'ai tué ma mère”では母と息子、“Les Amours imaginaires”では友達同士(男女)が同じ青年に関心を持ってしまったことによって生じる三角関係、“Laurence Anyways”では、男から女に移行したローレンスとその恋人との10年間に渡る関係、そして“Tom à la ferme”では亡くなった恋人の家族(母、弟)との関係が、サイコスリラー仕立てで描かれている。

彼の描く関係は、みな微妙にぎくしゃくしている。母と子も、友人/恋人同士も、相手の思いは読めず、自分の思いは素直に伝えられない。だから思いは常に鬱屈し、屈折する。そして監督である彼を投影してか主要登場人物たちはだいたいいつも若者だから、その鬱屈や屈折は若さ特有の鋭利な刃物のような自意識によってより鋭さを増し、人と自分自身を切り裂いていく。すでに若者ではない私などは、そうした若者たちの足掻きを懐かしい目で見てしまうけれど、当事者にとっては“懐かしい”なんてものではなく、身体中に散らばる傷口から血を流しながらの悪戦苦闘だ。

その悪戦苦闘は、たぶん監督自身にも当てはまるのだろうが、彼はそれを軽すぎず、重すぎない、洒脱と言っていいようなバランスで見せてくれる。フランス語圏であるケベック育ちだからというわけでもないだろうが、彼の映画にはヨーロッパ映画の匂いがある。たとえて言うなら、ゴダールやトリュフォーといったヌーヴェル・ヴァーグ時代のフランス映画。実際に比べてみれば、映像も手法も似てはいないのだろうが、巨匠による大作品ではなく、若者による感性が先に立った映画という雰囲気が私の連想を誘うのかもしれない。

それに映画の中の人物たちのスタイルも、50年代を連想させるのに一役買っている。ドラン自身、4作全部(“Laurence Anyways”ではパーティ場面にちらり出て来るだけだが)に俳優として登場しているのだが、その彼のスタイルが、黒縁の大きなメガネ、丈の短いスリムなパンツ、リーゼントに見えなくもないトップにボリュームのあるヘアスタイルといった、前世紀50年代の若者を彷彿とさせるヒップスタースタイルなのだ。“Les Amours imaginaires”では、主人公の一人であるマリーも、レトロなAラインのドレス、くっきり太いアイライン、ぴったり頭になでつけられたアップドゥなど、初期のA・ヘップバーンのようなスタイルで登場して、こちらを楽しませてくれた。

“Tom à la ferme”では、何しろ舞台が茫々と農地が続くケベックの田舎なので、彼の映画に常に感じられる都会のサブカルチュアという底流は微かになっていたが、それでも主人公トムがゲイだという点で、サブカルチュアの匂いは無くなってはいない。
そういう、どちらかというとマイナー向け、世界的大ヒットとは縁遠い映画が好きな人には、お薦めのドランである。彼のキラキラした感性を、お楽しみください。


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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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