ディクテは楽しいが

  • 2015/02/17 22:45
  • Category: 言葉
退屈だとかなんとか言いながらも、相変わらず比較的まじめに仏語教室に通っている。お楽しみは、たまにジョジアンがしてくれるディクテ(書き取り)だ。ディクテをすると、自分が何に弱いのかよくわかって、実に面白い。

先日も『Vendredi Treize(13日の金曜日)』と題する、たった8行ばかりの文の書き取りをしたのだが、自分が間違った箇所をあらためて見ると我が弱点がありありで、しみじみ「なるほどねぇ」と感心した。

随分前にも書いたことがあるが、私は音を聞き分けるのが実に下手くそだ。たとえばLとR、BとVなど、日本語で区別しない音は、まず確実に聞き分けができない。英語と違い、フランス語のLとRはまったく似ていないのに、それでも時々間違える。どうやら耳から脳に入ったとたん、どちらの音も日本語の「らりるれろ」に変換してしまっているらしい。だから知っている単語ならともかく、知らない単語の場合、平気でLをRと書き、RをLと書く。我ながら、何とも情けない。

子音でこれだから、日本語より格段に数の多い母音となると、我が聞き分けの出来なさ加減は、ほとんど感嘆に値する。先日のディクテでも、「un」と「en」と「an」の区別ができず、全部「あん」に聞こえて、頭の中が「???」になった。見直しの段階で、文脈から考えてここはこれだろうと、耳ではなく頭で判断して、それぞれ適当と思われる単語を書き入れたが、「en」と「an」(ともに[ɑ̃])はともかく、「un」は [œ̃] で全く違う母音なのだから、聞き分けができる耳を持っていれば、この3語がごっちゃになるはずはないのである。然るに、我が耳ときたら…

ちなみに、上記の例でもわかるとおり、聞き分けができない耳を持っている場合、聞き取りが難しいのは長い単語ではなく、短い単語だ。1音節なんてのは、最難関。だって音が1つしかないのに、その音が聞き分けられないとなったら、もうお手上げ。推察のしようがないからだ。その点、長い単語は楽ちん。長ければ長いほど手がかりが多くなるし、同音異義語も減る。正しく綴れるかどうかは別として、あれかこれかと迷う余地は減る。

思い返してみれば、この「短い単語ほど難しい」のは、中国語でも同じだった。だから最初の頃、文章ではなく単語の書き取りが主だった頃は、聞き分けられなくて、毎回「ぜつぼー」とか思っていた。何しろ中国語の場合、単音節の語が多く、しかも日本人の耳には区別が難しい音がぞろぞろあるのだ。私の耳に「ちー」と聞こえる音など、「ji」「qi」「zhi」「chi」と4つもある。ひとつ、ひとつ比較するかたちで順番に発音してもらえば違う音だということはわかるのだが、突然ひとつだけぽん!と出て来られると、瞬間どれだか全然わからない。「鶏(ji)」と「枝(zhi)」を間違える所以である。

況や、ひとつ、ひとつ発音してもらっても違いが判らないフランス語の母音においてをや。「deux(2)」と「dou(やわらかい)」、「vous(あなた)」と「veux(欲する)」を、どちらともつかない中間音で発音していることなど、しょっちゅうだ。[e]と [ɛ]も区別できないので、この間も「série【seri】」を[s ɛ ri]と発音して、雪だるまに「その音じゃないよ」と注意された。注意されたので、その場で彼の口真似をして何回か【seri】と発音しようとしたのだが、これができない。私が「え」というと全部 [ɛ] になってしまう。

まったく、こんなろくでもない耳と口しか持っていないのに、どうして毎日、毎日、外国語の学習が必要な環境に身を置いているのか、我ながら時々わけがわからなくなる。

ああ、日本語の音韻体系で耳が固まってしまう前に、さまざまな外国語の音を聞ける環境にあれば、もう少し苦労が少なかったであろうに。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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