ナビ 成田 カフカの城

  • 2015/03/01 00:34
  • Category: 日本
そういえば今回の日本では、最終日、実家からの帰りは妹に車で成田まで送ってもらったのだった。もともとは上野まででいいよ。京成乗れば1時間半だからと言っていたのだが、関越の三芳SAで休憩していた時、「もうしばらく会えないねえ」という話になり、じゃあ成田までドライブして少しでも長く一緒に過ごそうかということになって、三芳で急遽ナビに前泊することになっていた成田のホテルの住所を入れ、そこまで送ってもらうことにしたのである。ナビによれば、三芳SAから成田のそのホテルまでの所要時間は、有料道路選択で約2時間半。遅くとも5時過ぎにはホテルに着く計算だった。

でナビにしたがって走り始めたのだが、ナビの最初の指示は「関越を下りなさい」というもの。私も妹も「ここで関越下りて、どう行くんだろう。都内に入ると面倒くさいから、埼玉から直接千葉へ抜けるのかな」と、やや不審に思いつつも指示通り下りて一般道へ。車は三芳から朝霞へ入り、自衛隊のカンバンなどを横に見ながら、春っぽい陽射しのなかをすいすいと進んだ。この日はお天気がよく、暖かかったのだ。

しかしすいすいと進んではいるものの、ナビは一向に「××高速に入れ」という指示をしない。あくまで一般道なのだ。こちらとしては別に無理やり高速を使いたいわけではないが、高速を使わずして一体どうやって三芳から成田(最短でも170kmはある)まで2時間半で行けるというのか? ようわからん・・・と思いつつも、何しろ走ったことのない道。別の道を行こうという算段も浮かばず、そのままナビの指示通り一般道を走り続けた。

そして車はその後、埼玉から東京に入り、練馬から板橋、足立と東京の北辺を舐めるように走行。「渋滞の都内を迂回」という予測は見事に外れ、住宅と商業施設がごちゃごちゃと入り混じる典型的な日本の街を、ひたすらうねうねと走り続けた。このあたりでいい加減、妹と二人「こんなんで、ほんとに成田に着くのかいな」と訝り始めたが、上にも書いた通り東京北部から成田に行く道など不案内なので、ナビの言うとおり走り続けるしかない。すでに2時間近く経過しており、街はそろそろ昼下がりというより夕方に近くなってきたが、如何ともし難し。

そうこうするうちにやっと「松戸」という標識が見えて来て、後ろに座っていた雪だるまと三人して「やったー、千葉に入ったよ!」と喜んだが、千葉に入ったとは言っても道はますます細く、くねくねと曲がって、天下の“新東京国際空港”へと繋がる道路という雰囲気は全然なし。道の両側に並ぶのは広い前栽の農家、周りは梨畑である。松戸にはたくさんの梨農家があり、秋には梨狩りができると知ったのは収穫だったが、「このナビ、ほんとに正確なのか?」という疑問がますます深まった。

そして街は夕暮れから夕闇に近くなり、田舎道はほとんど農道と化して、田畑の中をうねうねと走る。確かに成田空港の周りは農業地帯のはずで、だからこそ「この豊かな農地を空港にするのなぞ、もってのほか!」と予定地にされた農民たちは筵旗で空港建設反対を叫んだのだったが、そうは言っても空港へ行く道路がここまで見事に農道なのはおかしくないか? などと思っているうちに道はますます暗くなり、勾配も出てきた。どうやら山の中に入る気配。「成田“山”新勝寺ってのは、文字通り“山”の中にあるんだっけ? そんなはずないよな・・・」と助手席に座る私の頭には愚にもつかない想念ばかりが浮かぶ。運転する妹の方も、いい加減うんざりの様子で「このナビ、ぜったい変!!」とぶーぶー。時はすでに午後6時近く。道は真っ暗である。

が、走行することしばし。その真っ暗な山道の下り坂をふっと抜けると、目の前に突然片側2車線の広い道路が現れた。おまけに「成田空港↑」なんて看板まである。今度こそほんとに「やったー!」である。山道を徘徊している時には、カフカの城みたいにこのまま延々走り続けるだけで、永久に空港には着かないのではないか?などという想念まで浮かんだが、どうやら道は成田に通じているらしい。街の灯りも見えて来たし、未来は明るい。そのうち今度は「成田空港300m」なんて看板まで現れた。ダッシュボードのナビも「目的地まで300m」と表示。おお、するとホテルは空港敷地内にあるのか?! ツイン1泊5000円で、その近さはすごい! と大いに感心していると、ナビが突然「まもなく料金所です」と言い出した。「は?なんで今さら料金所?」と、妹と二人顔を見合わせていると、ナビは続いて「次の分岐点で左折です」と言う。後ろから車も来ているし、まさか急に停車するわけにも行かないので訝りつつも指示通り左折すると、そこはどうみても高速へのランプ。そして「えーっ!?」と言っている間に、車は本当に東関道の入り口に乗り入れてしまった。

驚愕する3人を尻目に、ナビは涼しい顔で「まもなく目的地です」とアナウンス。そんなはずない、いくら何でもここで東関道に入るはずはないと、後続車に警笛を鳴らされて(そりゃそうだ、料金所のゲート前で立ちすくんでいるのだから)パニック気味の妹は、無理やり車を路肩に寄せ、ハザードを点灯、再度ナビを入れ始めた。私もホテルの住所を再確認。と同時に、どこかに戻れる道はないかとあたりを見回す。そうしてふと顔を上に向けた時、料金所の左側に迫る岩肌、切り立った崖のはるか上に××ホテルというネオンサインを発見。乱視老眼の目を無理やり凝らしてよーく見れば、それこそ我が目指すホテル! なんとホテルは東関道の入り口横の崖の上にあったのである。

思えばナビが古すぎたのか、ホテルが新しすぎたのか、ホテル名ではナビを入れることができず、住所で入れたのが運の尽き。ナビは正直に住所地番で検索して、その地番に我々を案内したのである。不運だったのは妹のナビの中では、その地番が崖上のホテルも崖下の料金所も同じだったこと。おかげで我々は目的地のホテルを崖上に見ながら、しかしそこへは行けないという、カフカの城状態に逆戻りした。

しかしとにかく料金所から抜け出さなくてはということで、妹は料金所のゲートの上にキラキラ光る「逆走車を見たらXX番へ」という番号へ電話。間違えてゲートまで来てしまったが、行きたいのは成田市内だと説明。ひたすら陳謝。すると10分ほどして係官が現れ、申し訳ないけどここではUターンはできないので、とりあえず10km先の最初の出口まで走って、そこから戻ってきてください。出口でこの私の判を押したチケットを渡して説明すれば、料金はかかりませんからと言う。これからまた10km、往復20kmも走るのか?と妹はげんなりした顔をしたが、係官に「パトカーでもここではUターンできないんです」と言われては仕方なし。大人しく10km先の最初の出口まで行って戻り、今度は東関道を出る前にホテルに電話して道を聞き、やーっと目的地のホテルに着くことができた。すでに午後7時を過ぎていた。三芳からホテルまで4時間半かかった計算である。慣れない道をずうっと運転し続けた妹には、本当にご苦労様だった。

それにしてもナビ。道路や施設の状況は日々変わるし、情報を更新できない旧型ではナビの情報と現状が合わなくなるのもやむを得ないが、今回の事態はなかなか傑作。目の前に料金所のゲートが現れた時にはおかしいどころではなかったが、今思い返してみると、けっこう笑える状況である。妹も後日、「あれは可笑しかった。運転し過ぎて翌日は右手、右足が筋肉痛だったけど」とメールに書いてきた。笑えるのなら結構。ただし次のボーナスでも出たら、新しいナビを買った方がいいとは思うけれど。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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