外来語

  • 2015/05/28 21:03
  • Category: 言葉
日本語会話練習に来るV君は、日本語の中に外来語が混じっているのが嫌いである。日本人の耳に聞こえた、あるいは綴りから推測した音をカタカナ表記するので、原音とは違ってしまっている場合が多くて元の語を推測しにくく、ということはつまり意味がわかりにくく、ついでに新しい外来語は辞書に載っていないことも多いので、調べてもわからなくて「???」の連続になってしまいがちだからである。学習者にとって、調べてもわからない言葉ほどイライラさせられるものはない。

それにもともとV君は、ケベックのフランス語の中に英語が混じりがちなのを苦々しく思い、「だからモンレアル(モントリオールのフランス語発音)は嫌い」という人である。ある言語の中に他の言語が混じり込むのを嫌う純粋主義者なのである。

実のところ、この嗜好は私自身にもあり、文章を書くときにはなるべく外来語は使わないようにしている。何らかの効果を狙って、わざと外来語/カタカナ語を使う場合もあるが、通常、漢語、和語で表現できるところに外来語を使うことはまずない。だからV君のこの嗜好は「大いに歓迎、望むところだ!」であり、V君用に日本語の読み物資料を作る時には、原文の中の意味を取りづらい箇所を簡易平明な言い方に変えると同時に、外来語もできるだけ漢語・和語に変えている。たとえば「相手はエキサイトして」→「相手は興奮して」、「その手の話題はアンタッチャブルに」→「その手の話題には触れないように」、「顧客にフォーカスした」→「顧客に焦点を当てた」という具合。たいていの場合、漢語・和語に直した方がわかりやすい。

ただし「誘う」と「招く」の使い方の違いについて考えていた時出てきた例文「彼女をドライブに誘った」については、「ドライブ」を「自動車での遠出」と直すことはしなかった。確かに「ドライブ」は外来語ではあるけれど、日本語の中に入り込んで久しく、前掲の例文のような状況の場合、「ドライブ」以外の語を使う日本人はまず居るまいと思ったからである。外来語でも頻出語はやはり覚えた方がよい。そうでないと生の日本人と会話する時、うまくいかない。趣味とはいえ、日本人と交流するために日本語を学んでいるV君なのだから、自身の嗜好に固執した余り却って日本人とわかりあえなくなるのでは本末転倒。意味がない。したがってドライブはドライブ、リコールはリコール、アプリはアプリ。第一、アプリに至っては置き換えの語が見つからない。もともとはapplicationだから無理やり日本語にするなら「応用機能」あたりかもしれないけれど、こう言ってそれがアプリのことだとわかる日本人はぜーったいにいないと思う。ちなみに中国語では「応用軟件(=応用ソフト)」という言葉が見つかったけど、これ本当に使われているんだろうか。あとでクラスメートに聞いてみよう。
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  • 2015/06/17 20:39

らうとら

「鍵コメ」様
まともな日本語になりにくい資料の翻訳は、ほんとにイライラしますよね。つられてヘンな日本語にしてしまうと、こちらの翻訳技量を疑われるし。私も仕事を辞めてほんとによかった、です。
  • URL
  • 2015/06/21 23:34

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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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