二大イベント

さて「コロノスコピー、山場は前日」の理由はもちろん、「絶食」と「2リットルの下剤」という二大準備イベントが前日にででーん!とあるからである。

特に絶食。ふだんから小食で、「朝は食べない、忙しければ昼食抜きでも平気!」なんていう人にとっては、1日飲み物だけで過ごすことなど何でもないだろうが、このワタクシ、食事は必ず1日3回。どんなに朝早い出発だろうと、朝食抜きで家を出ることなどあり得ず、昼食も夕食も常にしっかり食べ、食べることが好きなものだから、たとえ食事の直後であろうと「さて次は何を食べようかな」などと、次の食事のメニュをあれこれ思案できるような人である。

であるから、1日中固形物なし、口に入れていいのは透明液体のみと言われた時には、本当に目の前が真っ暗になる思いだった。しかし正しい検査のためにはどうしても腸が空っぽであることが必要とあれば、たとえ真っ暗闇夜のような1日になろうとやらねばならない。だって、せっかく検査してもらうのに準備の不備で病変を見逃されたり、見誤られたりしては元も子もないし、それで去年の手術みたいに「はい、もう1回!」なんてなったら目も当てられないからである。

というわけで前日は戦々恐々、指示を忠実に守りつつ、かつ我が旺盛なる食欲を抑え、誤魔化すために色々と準備した。まず飲み物はりんごジュースとレモネード。透明、果肉なしであること、赤色または紫色でないことが条件なので、そうなると該当するのはこの2種くらいなのである。オレンジジュースは果汁100%のものは果肉入りが多いのでだめだし、当地のミックスジュースはだいたいブドウ、ベリー系が入っていて赤いか、あるいはネクター風にねっとりと濃いので“透明”という条件から外れてしまう。

そのほか、甘いジュースばかりでは飽きてしまうので、白菜と人参、豚肉と生姜でスープも作った。調味料は塩と胡椒少々。汁をすくった時、実が入ったりしないように野菜は大きく切った。そして一応固形でもゼリーは食べていいと書いてあったので、オレンジ味のJell-Oも作った。

で前日は朝はりんごジュースとゼリー少々、昼はスープとリンゴジュース、夜はスープとゼリー、レモネード、合間にお腹が空くとジュースかスープを飲んで誤魔化すという風にして1日過ごした。何しろ日曜で、出かける予定も来客の予定もなし。好き勝手に過ごせるのはよかったが、1日中家の中にいると、キッチンカウンターの上の果物だの、コーヒーテーブルの上に残されたクッキーの鉢だの、そこここに置かれた食べ物が目につくのにはまいった。ふだんは何ということもなく見過ごしているのだが、空腹でしかも「食べてはいけない」と言われると、やたら目に留まる。我が家がこんなにも食べ物に溢れた家だったとは、この日この時まで気が付かなかった。

しかしまあ、こうした小さなことを別にすれば、絶食そのものは何とかやり通すことができた。固形物はだめでも飲み物は摂れるので、本当に何も口に入れられない時のように、力がなくなってふーらふらという事態にも、空腹で機嫌が悪くなって家人に当たり散らすという事態にも陥らずに済んだ。しかしこれは私が家で好き勝手にしていればいい人だから何とかなったのであって、仮に仕事のある人、会議とか接客とか肉体労働とかをしなければならない人だったら、1日飲み物だけというのはかなりきつかっただろうと思う。病院側の都合もあるだろうけれど、仕事のある人は絶食日が日曜に当たるよう、月曜を検査日にするのが安心かと思う。

そしてもう一つのイベント「2リットルの下剤」については、これは何というかやってみると実にあっけなかった。病院からの注意書きに「下剤により悪心、嘔吐感が起こることもありますが、実際に嘔吐することは稀です。飲みづらくても、少しずつちびちびと飲むのではなく、ごくごくと一気に飲んでください」とあったので、「はあ、絶食の上に嘔吐感ですか?」と飲む前はそれこそ嫌な虫でも見るように、テーブルの上の薬の箱を見ていたのだが、実際に飲む段になって、粉薬を1リットルの水に溶いてみると、1リットルというのは私が思っていたよりも少なく、かつ想像していたほど気持ちの悪い味でもなかった。透明で微かに酸味のある甘ったるい味は、ちょっと調整を間違えたスポーツ飲料といった感じ。しかしそうは言っても「おいしい!」という味では決してないので、ここはしみじみ味わったりせず、指示通り「ごくごく一気に」1回分250㏄を飲み干す。そしてタイマーをかけて10分後にまた250㏄、そのまた10分後にまた250㏄というように合計4回で1リットル。つまり30分で1リットル飲む勘定である。

*注)以下、主題が主題ですので、些か話が下がかります。お食事間近の方、また、その手の話題は苦手という方は、どうぞお読み飛ばしくださいませ。

1リットル飲み干した後はさすがに胃がこぽこぽする感じだが、幸い悪心や嘔吐感は起こらず、やれやれとほっとした。そして私は下剤というのは飲んですぐ効果が現れるのかと思っていたが、実際にその気が起きて来たのは1時間後。起き始めてからはかなり頻繁にトイレに通ったが、薬による便意は病気による下痢とは違い、腸が引き絞られるようなお腹の痛みも、身体から力が抜けていくような疲労感もないので、実にあっけらかんと楽ちん。「あ」と思ったらトイレに行って、とーっと出しておしまい。おまけに最初のうちこそ昨日までの名残の食物の残滓などがあったが、2回、3回とトイレ通いが重なるにつれ、排出されるのはほとんど液体ばかりとなる。日本語では尿を出すことを排尿、便を出すことを排便というが、この下剤の場合、当該行為の最も正確な表現は「排水」だなあと、トイレに座りながらしみじみ考えたりした。

しかしそのトイレ通いも1時間ほどでおしまい。つまり病院の指示どおり夜8時から薬を飲み始めると10時には終了→お寝すみなさいという段取りで、実にうまくできている。私も朝までぐっすり眠った。そして朝5時に起きて、また1リットルの下剤を飲んだわけだが、今度は本当に出てくるのは水ばかり。前日から液体しか口にしていないのだから当たり前だが、実に楽ちんな「排水」作業だった。終わった後は胃も腸も、きれいさっぱりすっからかん、という感じで、身体が軽い。試しに体重を測ってみると、ふだんより2kgばかり軽くなっていた。偉大なり、絶食と下剤!だが、この減った2kgのうち1kgは、検査が終わって普通に食事を摂り始めたとたん、即刻戻った。残り1kgはまだ減ったままだが、これも戻るのは時間の問題と思う。この私が、減ったままでいられるわけがない。

と長々書きましたが、これでおわかりの通り検査も準備も、想像するよりずっと楽ちん。お住まいの国、地域によって、手順や準備に多少の違いはあるでしょうけれど、当地と同程度の医療水準のところならば、だいたいまず似たようなもの。痛い思いや不快な思いをすることなく検査が受けられるでしょうから、検査が必要だったり、提案された場合は、あまり思い悩まずにお受けになることをお勧めいたします。下剤は特におもしろいです。
スポンサーサイト

Pagination

Trackback

Trackback URL

http://gaudynight.blog.fc2.com/tb.php/1706-7277fa2c

Comment

Post Your Comment

コメント:登録フォーム
公開設定

Utility

プロフィール

らうとら

Author:らうとら
ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

カテゴリー+月別アーカイブ

 

FC2カウンター