トラ刈り

この家に移り住んで4年、ここらでひとつ庭の手入れもしようと決めたらしい雪だるまは
去年の芝生の張り替えに続き、今年はチラシで見たという植木屋さんに庭木の剪定を頼んだ。

植木屋さんは6月頃だったか、とりあえず下見に来たが
庭木は夏に伸びるので、剪定するのは夏の盛りが過ぎてからの方がよい。
7月末にまた来ますと言って帰った。

そして約束通り、先週やって来た。
手伝いの若者も含め、総勢6名。
切った枝を拾い集める係りの下っ端の若者を除き、
みな手に手に大きな電動鋸を携えて、なかなか物々しい。
その重量感といい、耳をつんざくような音といい
なんだかウジ(蛆ではなくて、イスラエル製の短機関銃の方)で武装した
私兵集団の雰囲気。

ウチは庭の三方にシーダーの生垣、
デッキの横にもシーダーが一列、
デッキの下にはボックスウッドの植え込み、
階段の両側にバーニングブッシュ、
庭石のそばには松、
庭の隅には小さいりんごの木とさくらんぼの木、
そして花壇の中には私が大事にしているハクロニシキ
等々と、庭のあちこちに剪定が必要な木が散らばっているので
私兵集団風植木屋のオジサンたちも、
それぞれ唸りを上げる電動ノコを手に庭のあちこちに散らばって
作業を始めた。

庭を囲むシーダーはここ何年も剪定をしていなかったので
高さがバラバラ。
それをきちんと揃えて刈るのは結構難しいのか
一人が遠くから高さを確認、生垣に沿って組んだ足場の上に乗っかったもう一人が
その指示で鋸を入れるという二人がかり。
場所によっては足場を組めないところもあって、なかなか大変そうだった。
それでもだんだんに生垣は高さと厚みが揃ってきたし
庭石そばの松もきれいに刈り込まれてすっきりした姿になったので
これならだいじょうぶだろうと、それまでデッキで植木屋さんの仕事ぶりを
見ていた雪だるまと私は家の中に入った。

途中で一度、またデッキに出てみたが、その時はちょうど
我が愛するハクロニシキの剪定中で
それまで伸び放題に伸びて、風に葉っぱをそよがせていたハクロニシキは
きれいな球形に刈り込まれ、巨大な白いボールになりつつあった。
「おお、なんだかトピアリーみたい」
丸い形が好きな私は気を良くして、また家に入った。

そして夕方、全部終わったという植木屋さんの言葉に
雪だるまと共に庭に出た私は、花壇の中のハクロニシキを見て唖然茫然。
つい1時間ほど前に見た時には、大きな白いボール状だったハクロニシキは
その時の半分ほどの大きさに刈り込まれ、
しかも片側は球形だが、もう片側がまっすぐ直線で
ほとんど絶壁アタマ状態。
さっきのあの美しかった白いボールはどこに行ったの? である。
近寄ってみれば、電動鋸で切られた枝はあちこちぶっつり断ち切られていて
その無残な切り口は、とても将来の成長を見定めつつ、
全体の形を考えて剪定したとは思えない仕事ぶり。
そもそもシーダーのような枝葉が密生した常緑樹ならともかく
ハクロニシキのような柳を、電動鋸で剪定しようというのが無理なのだ。

おまけに彼らは生垣や他の木を剪定する時、
誤ってか、気にしなかったのか、周囲に植えてある花をけっこう傷めてくれて、
花穂が出かかっていたグラジオラスが数本折れていたり
オリエンタルポピーが踏まれて倒れていたり
日陰のピンクピューターに至っては、そばに剪定の必要な木などないのだから
いったいなんで踏みつぶされたのかとんと合点がいかないのだが
(考えてみると足場を運び出す時、そのあたりを通ったかも)
ともかく、彼らが帰った後で庭を一回りして
ほとんど胸がつぶれる思いだった。

いったい植木屋なのに草花に気を配らないとはどういうことか。
それとも彼らは剪定屋であって植木屋ではないのか。
わたしは植木屋というのは、煙管片手に庭木を眺めるのに半日、
枝を1本切っては、また考え込んで半日、という人たちかと思っていたが
どうもカナダでは違うらしい。

もっとも私が思い描いている日本の植木屋も、
考えてみれば落語や時代小説の中に登場するだけで
現代の、平成の植木屋は、カナダ同様、電動鋸で庭に現れ
ビイィィィーーンという爆音とともに、あっという間に枝を払って
風のように去って行くのかもしれない。

しかしいずれにしても、この次は絶対、植木屋にはハクロニシキは触らせない。
手間がかかろうと、下手だろうと、私が切る。
考えながら、切る。
大事に切る。
植木屋には、触らせない。



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Author:らうとら
ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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