Carey Mulligan

  • 2015/09/10 09:53
  • Category: 映画
『Never let me go』(2010)では、さほどとは思わなかった。キーラ・ナイトレイとシャーロット・ランプリングに気を取られて、おとなしい役柄の彼女には目がいかなかったのだ。次に見たのはたぶん『An education』(2009)で、これは映画そのものは大変面白かったが、主役のJennyを演じたのが彼女だったとは、これまた気が付かなかった。

「あれ?」と思い始めたのは『Drive』(2011)からだ。無口で控えめで、常にひとの陰に隠れているような女を演じたのに、妙に存在感があって、この時初めて彼女に注目した。そして一昨日見た『Far from the madding crowd』では最初から彼女に惹き付けられ、彼女を見たいがために、このあまり女にやさしいとは言えないトーマス・ハーディ原作の映画を最後まで見たのだった。

Carey Mulligan(カタカナ表記は“キャリー・マリガン”らしい)は別に絶世の美女というわけではないし、若い頃のヘレナ・ボナム・カーターのように、エキセントリックな魅力で目立っているわけでもない。笑うとえくぼの浮かぶ可愛らしい顔立ちではあるが、化粧で作り込まなければその辺のどこにでもいる女の子、という感じである。目立たない。そして背は高め(170cmだそうだ)だが、豊満というには程遠い華奢な身体つきで、だから実際より小柄に見える。ますます目立たない。

それなのに『Far from the madding crowd』では最初の数シーンで、彼女に魅了された。役柄もよかったのかもしれない。ヴィクトリア時代が舞台ではあるが、キャリーが演じるバスシーバはしっかりした頭の自立心に富んだ女性で、優しくないわけではないが、気の弱さや優柔不断さは持ち合わせていない。小作農と共に朝から夕まで農場に出て働き、女主人として男たちと対等に渡り合って、叔父から受け継いだ農場を立派に経営している。唯一の欠点と言えば、男を見る目がないことくらいである。おかげで目もあやな緋色の軍服の、気障ったらしい軍人にころり騙されて、臍を噛むことになるのだが、これはまあトーマス・ハーディの描く女はテスにせよ、この『Far from the madding crowd』に出てくるもう一人の女性ファニーにせよ、男で身を誤るのが相場となっているので、致し方ない。それでもテスやファニーとは違い、バスシーバは最後には古くからの友人かつ真っ当な男と結婚して「二人は静かに幸せに暮らしました」となるので、まあましだが。

話は逸れるが、このトーマス・ハーディとか、彼より少し前のブロンテ姉妹とか、英国のヴィクトリア時代の小説は、私にはどうも今ひとつ面白さがわからない。ハーディは『テス』を学生時代にざざっと斜め読みしただけで、複数の作品をしっかり精読したことはないので、ああだこうだ言う資格はないのだが、たとえば『テス』など、男にだまされたことがきっかけでずるずると転落していく女の話のどこが面白いのかちっともわからなかったし、エミリー・ブロンテの『嵐が丘』に至っては、今までに少なくとも3回は読んでいるはずなのに、感銘を受けるどころか、話の筋さえろくに覚えていない。世界的に有名なゴシック恋愛・復習譚も、私にとっては記憶できないほど印象に残らない話だということである。なんでかなあ。ヴィクトリア時代ではないが、ジェーン・オースティンも、よく書けているとは思っても、面白いとは思わなかった。あの時代、中産階級の娘および娘を持つ親たちにとって、いかによい結婚相手を見つけるかということが人生最大の関心事であったことはわかるが、そうした話を今、この21世紀の、人が結婚、離婚を繰り返し、あるいは結婚することなく共同生活することが普通で、たとえ結婚したところで、その相手が異性であるとは限らない時代に読んでも、なんだか全然感情移入ができないのである。あの時代の雰囲気に浸るために、あるいはあの時代を知るために資料として読むのなら、まあ面白いのだろうけれど。

閑話休題。もともとはキャリー・マリガンの話でした。彼女をご覧になるのなら、私のお薦めは『Far from the madding crowd』と『An education』だが、彼女はレオナルド・ディカプリオ主演の『The Great Gatsby』にも、デイジー役で出ているようだ。デイジーと言えば、私は遥か昔のミア・ファローのデイジーがすぐ頭に浮かんでしまうけれど、キャリーのデイジーもいいかもしれない。


『ギャツビー』のデイジー

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『Far from the madding crowd』のバスシーバ。この時はブルネット

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『Drive』のアイリーン

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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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