『L’aveu(告白)』

  • 2015/11/01 10:06
  • Category: 映画
『État de siège』を見てしばらくしてから、今度は『L’aveu(告白)』を見た。というか正確には半分だけ見た。雪だるまと一緒に見始めたのだが、主人公に対する秘密警察の取り調べ場面が余りに凄惨で、見続けることができなかったのだ。以前にも書いたように、私は最近“不快”に対する耐性が低下していて、過剰な暴力(精神的なものを含む)や悪意、暗愚が登場する映画や文章は、見て/読んでいられないのだ。

というわけで、『État de siège』同様、イヴ・モンタンが主役を演じた『L’aveu(告白)』、見たのはたぶん最初の40分くらいで、あとはパス。見ていないので、物臭くもウィキからのコピペでストーリーを紹介すると;
1951年のプラハ。スペイン内戦や第二次世界大戦中のフランスの対独レジスタンス運動に参加した輝かしい経歴を持つ外務次官のジェラールことアルトゥール・ロンドンは、ある日突然、秘密警察に逮捕される。
独房と取調室と廊下だけという暗黒の世界で、ジェラールは西側のスパイ容疑という身に覚えのない罪で想像を絶する苛酷な取り調べを受け、自白を強要されるが、頑なに拒絶する。
しかし、同じく逮捕された友人たちは次々と罪を“告白”し、ジェラールは次第に追い詰められていき、ついに罪を認めざるを得なくなる。
すべては共産党内部の権力闘争による、急進的スターリン主義者が行った大粛清の一環だったのだ。
といった具合。

どこの国でも、どんな体制下でも、こうした場合、逮捕された時点ですでに“罪状”は決まっており、後はあらゆる手を使ってその“罪状”に沿った“自白”を引き出すだけ。実際にやったかどうかなど、どうでもいいのだ。目的はターゲットとなったその人物/グループを政治的に抹殺することであって、真実を探ることではないのだから。

実際、この映画でも主人公は、食事もろくに与えられず、独房では座ることも横になることも許されず、常に歩いていなくてはならず、当然ながら眠ることもできない。たまに「眠る」許可が出ても、横になって目を閉じたとたん点呼で叩き起こされる。そして獄舎でも取調室でも、彼に向かって放たれる言葉は常に怒声だ。ふつうの口調、ふつうの声量でものを言われることは、まずない。
私はこの怒声の連続にまず参り、ついで描かれる状況の凄惨さと理不尽さを見ているのに耐えられなくなって、「もう、けっこう」となってしまった。

ただひとつ面白かったのは、これもフランス語の映画だったのだが、看守や秘密警察が主人公に対して“Marchez !”だの“Avouez !”だのvouvoyerで話していたこと。初級者の感覚だと、vouvoyerというのは日本語だったら敬語に当たるような、丁寧で礼儀正しい話し方で、したがって看守が受刑者に、取調官が被疑者に使うなんて考えられないのだが、彼らはずっとvouvoyerで話していた。ただし口調は丁寧さや敬意のカケラもない怒声。上の“Marchez !”だって、教科書でこれをみれば「歩きなさい」だが、この映画で看守がいう時の口調は明らかに「歩け!」だったし、“Avouez !”は「告白しなさい」(←これじゃあ教会の懺悔室みたいだがw)ではなく「白状しろ!」だった。

そういえばどこかで「vousで話すかtuで話すか、使い分けのポイントは丁寧さではなく、親しさだ。社会的、心理的に自分に近い人、距離のない人の場合、tuを使う」と読んだ記憶があるが、そしてその時は「ふうん」と思っただけだったのだが、こうして実例を見せられると、「なるほど」と納得できる。看守や取調官は主人公に敬意を表してvouvoyerしたわけではなく、社会的、心理的に自分とは離れている人、tuで話すような仲間ではないからvouvoyerしたのだ。Vousで話しても全く丁寧ではない場合があると知ったのは、なかなか面白かった。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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