25,000人

カナダは今年末までに、25,000人のシリア難民を受け入れる計画だそうだ。聞いた時は「そうか」と思っただけだったのだが、よく考えたらもうあと1週間で11月も終わる。今年末までというと、実質1か月くらいしかないのだった。実際に難民受け入れに当たる担当職員たちは、クリスマスどころか眠る間もないほど忙しいのではあるまいか。

もっとも、リベラル新政権が打ち出したこの難民受け入れ計画に、カナダ国民がもろ手を上げて賛成しているわけではない。IPSOSの世論調査によると、全国平均で60%の人がこの計画に反対だそうだ。いちばん反対者が多いのはアルバータで、反対70%、賛成30%。次はサスカチュワン/マニトバの反対66%、賛成34%。わがケベックは反対62%、賛成38%。以下、ブリティッシュ・コロンビア:反対60%、賛成40%、大西洋州:反対57%、賛成43%、オンタリオ:反対56%、賛成44%。いずれにしても、過半数以上の人が難民受け入れに懸念を示しているということ。

人々が心配しているのは、もちろん治安、安全の問題だ。政府は受け入れに際してはスクリーニングをすると言っているけれど、戦火の現場で、いったいどの程度のスクリーニングができるというのか。スクリーニングをかいくぐり、難民を装ってテロリストがカナダに入って来るのではないか? あるいはまた、受け入れた難民の中からテロリストが生まれ、将来カナダの社会に脅威を与えるのではないか、と。今回のパリ同時テロの首謀者(?)がベルギー生まれだったことを考えれば、懸念はあながち的外れでもないのだろうが、しかしそういう疑いの視線自体がテロリストを生むとも言えるわけで。それに、難民を受け入れなければ現在も将来も安全が保障されるのかといえば、そういうわけでもあるまい。そもそもイスラム教徒でもなければアラブ系ですらなかった、オンタリオ出身の赤毛の若者がISに参加するためにシリアに行き、プロパガンダヴィデオに登場したりしているのである。こちらから行くくらいなのだから、向こうからだって来るさ。いまさら鎖国なんかできるわけないし。

そして次の問題は費用。生活保障や医療その他、難民を受け入れれば費用がかかる。政府がやるのだから、使われるのは当然税金だ。他国からの難民に使う金があるなら、自国民の社会保障や福祉をもう少し何とかしろという意見に同調する人は多いだろう。だが私が読んだ新聞記事が正しければ、カナダに来て1年目の難民一人に支給される金額は、高齢者に支給される年金よりも少ない月800ドル程度だそうで、しかも難民がカナダへ来るためにかかった渡航費用は、後で政府に利子つきで返済しなければならないのだそうである。このため難民たちは、当初から何千ドルもの借金を背負うことになり、これがカナダでの生活基盤を確立する上で大きな足かせになっているのだそうだ。カナダに来れば安全で豊かな生活が待っている、というわけではないのである。

移民で成り立っている国とはいえ、移民は難民ではない。大部分のカナダ人にとって、シリアの状況は“明日は我が身”でないところが、一番の問題なのかもしれない。
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