『P’tit Quinquin』

  • 2016/01/08 02:59
  • Category: 映画
そう、それで『P’tit Quinquin』だが、これはフランスのTVミニシリーズで、Quinquin(私にはケンケンと聞こえる)というのは主人公の男の子(↓)の愛称である。


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もう見た瞬間、“悪ガキ”“大人なんか屁とも思わない悪たれ小僧”といった形容が浮かぶようなやんちゃ顔だが、これでこの子、なかなかいい子なんである。近所に住むGFイヴには、とことん優しいナイトぶりだし。


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お話自体は、このQuinquinが住む北フランス、英仏海峡近くの小さな村で、牛の腹の中に詰め込まれたバラバラ死体が発見される。殺されたのは近所の農家の奥さんらしい。捜査のため二人の刑事が派遣されるが、最初の事件の糸口もつかめないでいるうちに、またもや牛の腹の中に死体が・・・。と聞くと、閉鎖的寒村で起きた猟奇連続殺人事件風で、まるで横溝正史だが、実のところ映画は全然、陰惨でない。むしろ牧歌的コメディ風。なにしろ派遣されたのがこの二人組。


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どう見ても敏腕刑事という風情ではない。ボスである白髪頭のおっさんの方は、チックでも患っているのか、しょっちゅう目をぱしぱしさせてあらぬ方を見ているし、部下のひょろひょろと細っこいおじさんの方は、刑事というより農家の下働き風で、パトカーの中にいるより鍬を持って牛小屋にでもいる方が似合いそうだ。そして事実、二人の奮闘にもかかわらず、捜査はなかなか進まない。

そしてちょうど夏休みが始まったところのQuinquinは、イヴや悪ガキ仲間と連れ立って、この二人の刑事たちの捜査を覗き見したり、イヴを後ろに乗っけてあちこち自転車を乗り回したり、どうみても水温低そうな海に泳ぎに行ったり、“夏休みの子ども”の活動に精を出す。そしてその背景として、この北フランスの寒村の風景が映し出される。

私はこの映画の魅力は(Quinquinのキャラはもちろんだが)この寒村の風景と、そこに住む住人たちではないかと思う。牛の腹にバラバラ死体を詰め込むという事件のおどろおどろしさの割には、夏の日差しにきらめく青い海や、その傍らに並ぶこざっぱりとした家々、どこまでも続く金色の麦畑とその中をまっすぐ伸びる農道は、あくまでのどかに美しい。
そしてその美しい風景とは裏腹に、そこに住む住人たちはみなどこか少しおかしい。他と交流がないものだから何代にもわたって村内で血族結婚を繰り返してきた結果なんじゃないかと思われるような愚鈍さというか、どこか1本ねじが緩んでいるような表情、態度で、悲惨なはずの事件がちっとも悲惨に映らず、こちらを不思議な気持ちにさせる。妻が殺されても、ちっとも悲しそうではない夫とか、いくら7月14日が近いとはいえ、バトン・トワリングの服装で葬式に出席する女の子たちとか、Quinquinの叔父さんにあたる、これはもう明らかに健常者には見えない若者とか。
それに加えて例の二人の刑事である。これはもう並の捜査では事件が解決しないのも無理はない。そして、これを言ったらネタバレになってしまうが、実際映画が終っても犯人はわからないのである。ミステリ仕立てのくせに犯人不明のまま終わるなんて、そんなのありか?と思うが、どうもありらしい。私と雪だるまは、エンド・クレジットを見ながら顔を見合わせてしまった。なんともはや、奇妙な味わいの映画である。ちょっとヘンな映画がお好きな方は、機会がありましたらぜひご覧ください。

最後にところでQuinquin君の顔立ちだが、この手の顔は英国の労働者階級の子に割合よく見られるように思える。北フランスは英国と近いから似てくるのかなあ。たとえばほら、この子Thomas Turgoose君(2006英『This is England』)は英国生まれなんだけど、Quinquinと兄弟と言っても通りそう。


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ちなみにThomas君も悪ガキ役でした。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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