『Mandariinid(Tangerines)』

  • 2016/01/10 12:52
  • Category: 映画
『Mandariinid(Tangerines)』(2013年:エストニア/グルジア)は、90年代初頭、グルジアからの独立を求めるアブハジア紛争が勃発した頃のグルジア、アブハジア地方が舞台。この黒海北岸のアブハジアにはグルジア人、アブハジア人だけでなく、エストニア人も住み着いており、主人公Ivoが住んでいる村も、そうしたエストニア人村のひとつだったが、紛争の激化でほとんどの住人は故国へ帰ってしまった。今この山中の寒村に残っているのは年老いたIvoと、隣人のMargus、医者のJuhanくらいだ。そしてMargusも栽培しているタンジェリンの収穫が終わり次第、他へ移るつもりではいる。

しかし、住人がほとんどいなくなった山の中の村にも、兵士たちはやって来る。そしてIvoたちの家のすぐ近くで、撃ち合いが始まる。どちらがどちらともわからない銃撃戦。全員死んだかと思われたが、二人の兵士が虫の息で生きていた。Ivoはこの二人を助ける。一人はグルジアの志願兵Niko、一人はチェチェンの傭兵Ahmed、つまり敵同士だ。グルジア側に仲間を殺されたAhmedは、最初同じ屋根の下にいるNikoを殺してやると息巻くが、彼自身ろくに動けぬ身。Nikoのいる部屋の前で力尽きて倒れる。

医者Juhanの手当とIvoの看病の甲斐あって、何日かするうちにNikoもAhmedも何とか歩き回れるようになるが、Ivoはいがみ合う二人に「この家は私の家だ。この家の中では、殺し合いはするな」と約束させる。
Nikoはグルジア側でキリスト教徒、Ahmedはチェチェンでイスラム教徒。出自も違えば、宗教も違う。しかしIvoの家にやっかいになっているうちに、ふたりはだんだん心を通わせ合うようになる。そしてある日やってきたロシア兵たちが、Ahmedを敵方と勘違いして撃ち殺そうとした時、NikoはAhmedを助けようと応戦し、逆に撃たれて死ぬ。Margusもタンジェリンの収穫を前に、銃撃戦に巻き込まれて死ぬ。生き残ったのはIvoとAhmedだけだった。

自身の息子の墓の隣にNikoを葬ったIvoに、Ahmedは「家族が恋しくなった。傭兵は辞めて故郷に帰る」と告げる。

反戦映画は、敵味方に分かれて殺し合うことの愚かしさ、無意味さを訴える。敵だろうと味方だろうと、国が違おうと、民族が違おうと、宗教が違おうと、個人として知り合ってみれば、心を通わせることは不可能ではない。そして大部分の兵士たちは、自分の故郷を家族を守ろうとして兵士になるが、戦うということは殺し合うということで、だからそれは生命を、生活を守ることにはつながらず、むしろ守りたかったものを破壊していくことにしかならない。そんなことはみな、十分わかっているはずだ。

映画で、小説で、歌曲で、人々は反戦を訴える。人の生命は何よりも尊いという。平和は世界の願いだという。そしてそう言うそばから、自治や独立や資源や利権を求めて武器を取り、民族や宗教や主義主張の違いを理由に、自分と異なるものを排除して行こうとする。人は個人単位では寛容でも、集団になると徹底して他者を嫌う。

今、私がこんな駄文を打っている間にも、シリアでイラクでアフガニスタンでイエメンでパレスチナでソマリアで、そしてその他の挙げきれないほどたくさんの地域で、戦闘、紛争が続いている。一応平和な国々でも、移民や先住民や異民族、外国籍者など少数者に対する差別や、少数者を巡る紛争は絶え間がない。

時々思うのだ。人々が平和を願っているなんていうのは幻想で、本当は争うことが好きなのではないかと。それでなくてどうして、世界中でこうもたくさんの戦争、紛争が起こるだろうか。ヒトは生来、それによって自分自身と自身の種を滅ぼしかねないほど闘争本能の強い生物なのだと、いいかげん悟った方がよさそうな気がする。


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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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