「座頭市」

  • 2016/07/10 22:03
  • Category: 映画
勝新太郎さんの「座頭市」シリーズを1から7まで7本見て、どうも市さんは私好みのキャラではないと、かなりはっきり悟った。

もちろん私だって昭和生まれ。「座頭市」の名前は子どものころから聞いていたし、その映画シリーズでは、勝さんが延々主人公の“市”を演じていることも知っていたが、しかし実際に映画を見たことは一度もなかったので、勝手に市さんも「仕掛け人梅安」みたいな、クールでニヒルな人物かと思っていたのだ。

ところがどっこい、映画の市さん、全然ニヒルではない。軽薄、とまではいかないが、けっこうひょうきんで、かなーり生臭い人物なのだ。それでも第1作、2作(ともに62年製作)では、まだ勝さんも“市”の性格を少々重めに設定していたのか、労咳病みの浪人・平手(勝の実兄、若山富三郎が演じている)との釣りを縁とするほのかな友情(1作目)や、兄・与四郎(またもや若山が演じている)との確執(2作目)が描かれたりして、それなりにシリアスだったりするのだが、カラーになった3作目あたりから、市のキャラがだんだん軽くなってくる。

何が軽いって、まずふだんの物言いが軽い。盲の按摩として「あたしなんて・・・」と妙にへりくだった態度でへらへら笑い、隅の方でちぢこまっていたりする。もちろん賭場でヤクザの兄さんたちとやり合う時には態度一変。凄みを効かせた口調で、兄さんたちを煙に巻いたり、恫喝したりするのだが、ふだんはあくまで気安くひょうきん。その態度はよく言えば軽妙、悪く言えば軽薄。

そして女にも弱い。飯屋や飲み屋では平気で女たちとふざけるし、行く先々で知り合う素人女たちとも、そこそこかかわりが出来たりする。(不思議なことに、女の方もまた市にけっこう関心を示すのだ) が、まあ、ふつうはかかわりができても、縁になった揉め事が終わればそれっきり、「はい、さようなら」なのだが、たまに本気で相手に惚れ、たとえばかつての師の妹(浪人とはいえ、腐っても鯛の武家娘)から思いを寄せられれば、「市は今日から真人間になります」なんて、あっさりその気になる。およそ単純である。

金も好き。金のためなら何でもする、なんてところはないが、腕を見込んで助っ人を頼まれれば
、その助っ人料を吊り上げるのに遠慮はしない。その代り、世話になった人や助けが必要な人には惜しげなく金を与えたりもするが、金がないのにある振り、「武士は食わねど・・・」的なやせ我慢はまずしない。(まあ彼は盲で按摩でやくざで、武士ではないのだから、当たり前といえば当たり前だが)

それに、それに、これを言ったらお終いかもしれないが、市さん、旅から旅へ明け暮れる流れ者の按摩にしては、栄養良すぎである。演じる勝さんが当時30代の若さだったのだから仕方がないのかもしれないが、もともとの丸顔に肉がたっぷりついて、つやつやと光り、身体つきもがっしりと太り肉。どこにも「按摩かみしも十六文」と、十六文(そば一杯と同じくらい?)で、全身マッサージを提供する、旅按摩の貧の影はない。

そしてこの脂ぎった丸顔、体躯でひょうきんな仕草をされたり、女とふざけられたりすると、その俗っ気がいっそう際立ち、生臭さが増すのだ。そういった気取りのなさ、気の置けない親しみやすさが勝さんの持ち味であり、人気の理由なのだろうけれど、ヒーローとしては理の勝った冷静沈着タイプ、あるいは飄々とした世捨て人タイプが好きな私の嗜好とは、およそ相容れない。誠に残念。

さて座頭市シリーズは全26作。いま7作見たところだから、あと19作残っている。聞くところによると、シリーズ後半では市さん、徐々に渋みが出てくるという話なのだが、さて私好みのヒーローに変わってくれるのだろうか。それとも勝さんのことだから、40代、50代になってもぎんぎらぎんのままなのかなあ。


何しろこの丸顔だからなあ

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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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