60年代サムライ映画

  • 2016/07/15 08:56
  • Category: 映画
そもそも座頭市シリーズを見ようと思ったのは、その前に見た60年代のサムライ映画が、予想外に面白かったからである。

雪だるまが買ったボックスセットだったのだが、その名も『Rebel Samurai : Sixties Swordplay Classics』と、お上に盾突くサムライを主人公にした映画ばかり4本、集められている。誰が選んだのか知らないが、これがなかなかの秀作ぞろいで、まず話がしっかりしている。よくあるチャンバラ映画のように、紋切り型に勧善懲悪、滅法腕の立つ浪人が悪代官一味をばっさばっさと斬り捨てて大団円、ばんざーい!なんて話は1本もない。どの話もそれぞれに、裏の裏を掻くように、一捻りも二捻りもしてあるのである。

たとえば1本目の『上意討ち・拝領妻始末』(67年、監督:小林正樹)。粗相のあった藩主の側室の厄介払いに、家臣の一人に妻として押しつけ、しかし正室が生んだ嫡男が急死し、側室の子が世継ぎとなると、世継ぎの生母が家臣の妻では何とも具合が悪いと、今度は下賜した側室を城へ返せと言ってくる。

そうした藩主やその取り巻きたちの身勝手に振り回されるのは常にその下にいる家臣たちであり、またその妻であり母であり娘である女たちだ。主命とあればどんな理不尽もご無理ごもっとも、「否」は言えないのが武士社会である。そこに理は入らないし、情も入らない。

『上意討ち・拝領妻始末』の主人公、側室を下賜された藩士とその父は、最後、主命に抗って家に立て籠もり、藩からの討手に討たれるが、たとえ傍からは犬死と見えようと、父子にとっては本望。ことに父の方は婿養子に入って以来30数年、家付き娘の尻に敷かれ続けてきた男が最後に見せた意地なのだ。これを本望と言わずして何とする。

2本目の『獣の剣』(65年、監督:五社英雄)も同様。藩財政を助けるため、山中に隠れ住み、藩命で幕府領の砂金を盗掘していた某とその妻は、立派にその任務を果たしたにも関わらず、最後、約束通り藩士に取り立てられるどころか、砂金を受け取りに来た家老たちに口封じのため殺される。そしてその某と生前些かの関わりがあった浪人も、実は騙されて上司を斬り、その娘から仇と追われる身になった男。共に“藩”の政争や権力争いに巻き込まれて、馬鹿を見た男たちだったということだ。

しかしいくら馬鹿々々しい武家社会でも、その中に生きるものはその掟、しきたりに従わざるを得ない。「あほくさ」と逃げ出し、町人や遊び人になってみたところで、暮らしが楽になるかといえば、まさかそんなはずもなく、気楽は気楽でも腹はくちくならない。

それでも逃げ出してみたのが、『斬る』』(68年、監督:岡本喜八)の源太であり、逆に「武士になりたい」と剣術の腕を磨いているのが田畑半次郎だ。方や元武士の遊び人、方や農民上がりの武士志願と立場は逆だが、ここでも二人は藩の権力争いに巻き込まれ、敵味方に分かれて戦うことになるが、結局最後は田畑も武士の世界の堅苦しさと権謀術策に嫌気がさして、百姓に戻ろうと裃を脱ぎ捨てる。

この映画では特に、源太役の仲代達矢さんが何とも言えずいい。いかにも世慣れた遊び人らしい剽軽な物言いに加え、あのぎろりと大きな目が茶目に動いて、さらりと軽妙。この、世の中の裏も表も見尽くし、知り尽くした上での身ごなしの軽さは、私のお気に入り『幕末太陽傳』(57年、監督:川島雄三)のフランキー堺、居残り佐平次を思わせるところもあり、おかげで最初の数分で「これは、これは」と引き込まれてしまった。

それにそもそも、『黒い河』(57年、監督:小林正樹)を見て以来、私は若い頃の仲代達矢さんのファンなのだ。彼が出ているのなら、どんなつまらない映画でも見てみたいと思っているくらいだ。(もっとも彼はあまりつまらない映画には出ていないようだが)

そして彼だけでなく、最初に挙げた2本で主役を演じている俳優たちも、三船敏郎、加藤剛、司葉子(拝領妻始末)、平幹二朗、加藤剛、岩下志麻(獣の剣)など、錚々たる顔ぶれ。脚本がよくて、俳優がよくて、監督がよければ、つまらない映画になるはずがないではないか。

古い映画なのでレンタルビデオ店ではあまり見かけないかもしれないが、もし図書館などで見かけたら、ぜひ鑑賞をお勧めしたい3本である。

ところでボックスセットは4本組。残りの1本は『異聞猿飛佐助』(65年、監督:篠田正浩)なのだが、残念ながらこれだけは私の好みからは少々外れた。なのでストーリーもよく覚えていない。篠田監督のファン、あるいは猿飛佐助に興味のある方なら面白いと思われるかもしれない。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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