FC2ブログ

やっと読了

  • 2017/11/07 21:54
  • Category:
先月末、例の「Le cas Sneijder」を読み終わった。
読み始めたのが5月末だから、たかだか200ページちょっとの本にまるまる5か月かかったわけで、カメよりのろい、ナマケモノ並みの漫歩さ加減だが、あまたの新出単語をひとつひとつ調べつつ音読しているのだから仕方がない。

それでもこの本は、最後まで実に実に楽しかった。
作者である Jean-Paul Dubois 氏のシニカルに冷めたものの見方と、その裏に微かに漂う皮肉っぽいユーモア。嫌味なほどの(しかし私にはこの上ない御馳走で、興奮の軽電流が背筋を流れるような)ペダンチズム。魅力的な人物を淡彩画のようにさらりと描き出す筆力。(主人公のPaulも悪くはないが、常に物静かで、しかしすべてを見通す眼差しを持つ博識の弁護士 Wagner-Leblond や Paulの娘Marieの生き生きと弾む精神はさらに魅力的だ)
活字中毒者として、今までそれこそ数えきれないほどの小説を読んできたが、ここまで私の好みのツボにぴたりはまる文章を書いてくれる人は珍しい。

ただし勉強中のフランス語で読んだので、読み取れていない部分が多々あることは間違いないし、誤読した部分もそこかしこにあると思う。それでも、たとえ手探り状態の言語であっても、その内容や文章のスタイルが好みか好みでないかは、自ずとわかる。母語でない言語で読む場合、作者によって選ばれ、使われた言葉のひとつ、ひとつ、その語が持つイメージ、その語から一瞬にして想起されるあらゆる、ほとんど無限の連想、あるいはまた発音された時の音、その響き、そしていっそ手ざわりといっていいような、その語に接したときの感触、そうした、一つの言葉が内包する情報の一切を瞬間的に脳裏に浮かべて、それを舐めるが如くに味わうような読み方はまずできないが、(読んでいる言語が外国語で、新出単語の連続では、“語の持つイメージ”などありようがないし、当然、連想もない。音? 知らんがな・・・)
が、それでも、たとえ盲人が象を撫でるような読み方でも、その撫でている象が大きいか小さいか、触っている皮膚が硬いか柔らかいかくらいはわかるし、死んでいるか生きているかも、(たぶん)わかる。

で、つまり今回わたしが撫でた象は、その触った手の向こう、皮膚の後ろに暖かい血肉、しっかりした骨組みや筋肉の弾力が感じられる象で、しかもその手ざわりは、象とは思えないほど滑らかで心地よく、私の手をうっとりとさせたのだ。

と、ここまで惚れ込むと、これはもう次も引き続き彼の作品を読みたいところだが、幸か不幸か、先ごろ叔母さんの一人が「とっても面白かったから、ぜひ読んでみて」と、300ページもある分厚い小説を貸してくれたので、まずはそちらを読まねばならない。この小説「L’amant japonais」というタイトルで、作者はIsabel Allende。もとはスペイン語だが、叔母さんが貸してくれたのは、もちろん仏訳版である。

せっかくの叔母さんの好意を無にするわけにはいかないので、Dubois氏を読み終わった翌日から勤勉に読み進めてはいるが、とりあえず30ページ、第2章まで読んでの感想は「うーん、味が薄い」
オハナシの展開はそれなりに面白そうではあるが、陰影に富み、皮肉の利いたJean-Paul Dubois氏の文章を読んだ後では、Allende氏の文章はあっけらかんと平明過ぎるというか、クリシェというか、なんだかハーレクイン・ロマンスを読んでいるようで、古い居酒屋であん肝か何かで一杯やっていたのが、急に白い蛍光灯も眩しいファミレスに連れて来られてペスカトーレの大皿をどんとあてがわれた気分。

まずくはないし、たぶん海鮮たっぷりのペスカトーレの方が、あん肝より栄養もありそうで、健康によさそうだが、舌の喜びという点では・・・、やはりあん肝に一票か。
スポンサーサイト

Pagination

Trackback

Trackback URL

http://gaudynight.blog.fc2.com/tb.php/1918-9d4f5a26

Comment

Post Your Comment

コメント:登録フォーム
公開設定

Utility

プロフィール

らうとら

Author:らうとら
ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、米朝、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

カテゴリー+月別アーカイブ

 

FC2カウンター