練習

  • 2011/10/21 07:07
  • Category: 着物

先日の夜、お義父さんとフランスが遊びに来て、フランスが着物を着てみたいというので、着せてみた。彼女の背丈は私とほぼ同じ。胸は豊かだが肩幅は狭く、全体にほっそりした体つき。だから私の着物は楽々着られるはず、と思ったのだが、これが着せてみたら肌襦袢省略でブラ+Tシャツの上にウソツキ半襦袢→着物だったせいか、胸が前にどーんと出、ついでにほっそりしているように見えたウエスト周りも実際には結構寸法があって、なんだか円柱に着物を着せたような具合になってしまった。アジア人とコケイジアンの骨格の違いを、またまた実感。細く見えても、彼らは厚みがあるのだ。

 

しかし本人は白地にピンクと紫、薄青の花綱が散らされた着物+金茶の桜模様の半幅帯を文庫結び(外国人にはお太鼓は不評だから。帯揚げと帯締めをちゃんと締めるのも大変だし)に大変満足したようすで、今月末のハロウィーンダンスにこれを着たいという。

 

「ハロウィーンのコスチュームが着物ですかあ?」とは思ったが、本人大乗り気だし、お義父さんもにやにやと嬉しげだし、着物も正絹とはいえベイで30ドルくらいで落札した安物で、かつ花綱の色合いがあまりにきれいだったのでうっとりして落札してはみたものの、私には似合わないはんなりと優しすぎる小紋でこの先着ることがあるとは思えないので、「着たいのならば、お貸ししましょ」とOKした。

 

そして人に着せてみたら自分も着たくなり、翌日の午後、えいやっ!と濃緑に暗赤色で小さい壺がぎっしりならんだお召を着て、ベージュの本筑なごやを偽角出しに結び、ついで夕飯を作る都合があったので、その上にこの間日本に行ったとき巣鴨で買ったバテック風の割烹着を着てみたら、があああん! 鏡の中から私を見返しているのは、小料理屋の女将。しかも神田あたりの粋な小料理屋ではなくて、私鉄沿線または地方都市の駅前通りにある、肉じゃがあたりが看板料理の、いまいち冴えない小料理屋の女将!

 

我ながら愕然とし、ついで「ちがーう!!」と激しく思った。この着姿、これは私ではない。どこをどう間違えたのかよくわからないが、とにかくこれは私ではない。私の性格の悪さが、まったく出ていない。なんともはや、普通の善人、仕事帰りのお父さんが気軽に「ちょっと一杯」ひっかけに寄るような小料理屋の、料理の腕はいまひとつだが愛想のよさと人のよさ(この私が!)が売り、のような女将に見えているのだ。冗談もほどほどにせぇよ、自分!である。

 

さすがに我ながら気持ち悪く、なんでこうなってしまったのかつくづくと考えた。これはたぶん着物の問題というより着方の問題で、着るにあたって教科書通りに律儀に襟をきっちり合わせ過ぎ、帯も帯締めもきちんと四角四面に結び過ぎたのが敗因だと思う。その上さらに中途半端な長さの髪をうなじでシニヨンにまとめたから、野暮ったいほど真面目で人のいい小料理屋の女将になってしまったのだ。ああ、失敗。

 

着物は着始めたばかりだし、思うように着られないのは仕方がない。しかしそうは言っても本来の私と似ても似つかない姿になってしまうのは困る。私がうっとり見とれる着姿は、たとえばマルファクトリーの着物に刺繍をしていらっしゃる三原佳子さんや、更紗のコレクターで“歩く美術館”と言われた菊池信子さんなどだが、年季も資質も段違いすぎて、まさか真似はできない。思うように着られるようになるには、せっせと着るしかないか。


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本日、また着てみた。こんどは黒地のお召しに青緑の帯。襟をゆったりめに合わせ、帯もあまりきっちり結ばず、「まあ、これなら善人には見えないな」という姿になった。ちょうどつけていた黒のピアスも、そのままでぴったりだったし。しかし着物のまま夕飯を作っていたら、割烹着を着ていたにもかかわらず、右袖が濡れてしまった。絹物に水は禁物とは言われても、濡らさずにご飯作るのは難しいぜ。

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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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