『母べえ』

  • 2009/10/12 16:16
  • Category: 映画
この土日に見た映画の中で、一番印象に残ったのは『母べえ』だった。感動のあまり印象に残ったのではなくて、中途半端な不快感で印象に残ったのである。もともと私は“献身的妻とか“献身的娘”とか“献身的息子”とか、“自らを犠牲にして他に尽くす××”を感動的に描いた映画、小説が大嫌いだ。献身自体もあまり感心しないが、それ以上に献身を賞賛賛美し、感動的オハナシにすることが嫌いなのだ。だって考えてみるがいい。献身している方はそりゃあ自己陶酔できていい気持ちかもしれないが、献身される方はたまったもんじゃない。「あなたのために、ここまでしたのよ」なんて言われたら、その重さ、息苦しさに窒息しそうになる。だから、そんな行為を賛美し、助長するようなオハナシをつくるのは止めてくれ、と思うのだ。


『母べえ』の何が不快だったのか。まず私にとっては、あの時代そのものが不快だ。私の天邪鬼な性格から考えて、あの時代の思想に共鳴できたはずはなく、しかし自らの考えを節を曲げずに貫くだけの強さがないことも、骨身にしみてわかっているので、あの時代を見せられるのはいやなのだ。
ついでに山ちゃんの気持ちに気づきもしない母べえの鈍感さも不快だ。夫を愛し、子どもたちを慈しむ白菊のように清純な女として描かれているだけに、よけい不快だ。気づいてやれよ、こら!である。あの時代だから、気づいてどうしろと言うわけではないが、せめて気づいてやってもいいんじゃないか。いい年をした男が恩師への敬愛だけで、足しげく通ってくるわけはないではないか。


しかしそれより何よりいやだったのは、たぶん“愛情にあふれた幸せな家庭”という嘘っぽさだろう。山田洋次監督がそういうのが好きなのはわかるが、それらしく描けば描くほど嘘っぽくなる。
最後、母べえの臨終に駆けつけ、「(父べえに)生きてるうちに会いたかった」という母べえの言葉に号泣する照べえ(戸田恵子)。そういう母子の愛情がわからない私は白けるばかり。映画の中で、『犬』が死ねば私は泣くが、『母』が死んだのでは私は泣けない。
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Comment

やまけろ

なんて言ったらいいんでしょう、、、誕生日に親子とか兄弟姉妹で贈り物をし合うってのも苦手と言いますか、「仮面家族」的に捉えちゃうんです。そういうのがダメっていう感覚なので、「母べえ」は拒絶しちゃうかも。
献身って微妙なんですよね、献身される方にとっては。
職場の他課に休憩時間をズラして倍の20分も取ってる友人が居て、理由が「製造課の人達の邪魔になるから」って言うんですが、、、単純に自分がゆっくりしたいのを人に貢献しているような理由付けをする。他にもいろいろあるのは割愛しますが、自分を良く見せるために他人を利用してるだけの「仮面愛情」とか感動出来ないっす。すみません、長くなりました。

loutra

我ながら性格悪いよな、とは思うのですが
いやなものはいやなので、しょうがないです(笑)
親子の情愛が深いのは、もちろん歓迎すべきことで
憎みあうよりずっといいんですが、しかしそれを正面切って
描かれると、どっと引きます。
献身にしても「あなたのために」が前面に出たら、おしまいですよね。いや猫ズに献身しちゃうのは、OKなんですが。^^;
  • URL
  • 2009/10/14 17:09
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らうとら

Author:らうとら
ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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