『異国の客』『氷姫』

  • 2009/09/03 08:44
  • Category:
この頃読んで楽しかった本


池澤夏樹氏の『異国の客』
先日の出張の帰り、成田で買った。機上でさっそく読み始めて、静かに幸せを満喫した本。池澤さんは『スティル・ライフ』と『マシアス・ギリの失脚』くらいしか読んだことなくて、「嫌いじゃないけど、作品全部読みたいほどでもなし」という程度の位置付けだったのだが、このエセーは気に入った。大都市から近からず遠からずのこじんまりした街で、静かに諸事を観察しながら考えるという姿勢がいい。そういう静かな生活がジンセイ後半に対するわたしの理想なのだ。なにしろご当地は『静謐』とは無縁、その対極にある街だから。


カミラ・レックバリ氏の『氷姫』
スウェーデンの小さな町を舞台にした推理小説。これも成田で買った。謎解きそのものは、いくらも読まないうちに「たぶん、こう」とおおよそ推察できてしまう程度だが、スウェーデンの小さな町の描写を読むのは楽しいし、脇役として登場する老人2人が実に生き生きしていてよい。1人は被害者のご近所さん。80歳近い老女だが「年をとったら、ちょっとは奇抜なことをしないとね」と言って、サンタの人形を1000体以上も集めて、クリスマス時期になると居間にずらり並べて人の度肝を抜いたり、クリスマスプレゼントに息子に貰ったという最新式エスプレッソ・マシンで淹れた超モダンなコーヒーと、「引退する前はケーキ屋をやっていたのよ」という、山のように積み上げた美味しい菓子パンで事情聴取に訪れた刑事をもてなしたり、何しろ楽しい婆さんなのだ。私もこういう婆さんになりたい。
もう1人は死体を発見する元漁師。長い長い間、口うるさい妻の圧制に耐え黙々と仕事をして暮らしてきたが、被害者にちょっとした仕事を頼まれ、しかもそのお礼が彼にとっては破格の金額だったので、その金を少しずつ少しずつ貯めて、ある日ある時出奔するのだ。寒いスウェーデンを離れ、陽光輝くスペインのコスタデルソルへ。近所の人に頼まれた半端仕事をしながら海辺のペンションに暮らす彼のしみじみと幸せなようすが、読んでいるこちらをも幸せな気分にする。私もこういう風に出奔したい。半端仕事をしながら楽しく暮らしたい。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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