『ミラノ 霧の風景』

  • 2009/04/07 14:24
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日本に2週間もいたのに、今回は1冊も本を買わなかった。実家からまともな本屋までは車で30分ほどかかり、掃除と病院通いの合間に、本を物色する時間を含めて2時間以上、家を留守にするのはなんとなく気が引けたからだ。


代わりに実家においてあった大量の本を整理し、埃を払い、うち3冊を持ち帰った。持ち上げることさえできればもっとたくさん持ち帰りたかったのだが、アダプタも入れて8キロ以上になる大型ラップトップ+大型スーツケースでは、これが限度だった。
持ち帰ったうち1冊は須賀敦子さんの『ミラノ 霧の風景』。白水社から最初に出た版だ。奥付に199012月第1刷、9110月第6刷とあるから、もう20年近く前になる。確か白水社とみすずと共同で出していた出版案内で知り、アマ○ンもネット書店もなかった当時、近所の本屋にはなかったから、クロネコヤ○トのブックサービスを利用して買った本だ。(当時を思い出すと何とアナログな環境だったのかと思う。紙に印刷された出版案内で本の出版を知り、専用の注文葉書に手書きで欲しい本を記入してクロネコさんに郵送すると、しばらくしてクロネコさんが本を配達してくれたのだ。ネットのネの字もない環境。たった20年前なのに!)


しかしそうしてせっかく買った本だったのに、25ans娘だった当時のわたしは“ミラノ”から想像した華やかさが全く感じられないこの本に失望して、ざっと読んだきり積読棚に横置きして、その後の中国行きにも持っていかなかった。
須賀敦子さんのよさに気づいたのは、それから数年以上経ってからだ。きっかけが何だったかは忘れた。もしかしたら風杜マリアさんの文章で、絶賛という感じで紹介されていたからだったかも知れない。『コルシア書店』を始め、文庫で出ているものは、ほとんど全部買って読んだ。昔と違い、海外にいても本はインターネットで日本の書店に注文でき、クーリエなら34日、SAL便でも2週間で届くようになっていた。注文葉書に欲しい本の題名、著者名、出版社名をしこしこと手書きしていたあの日々は、遠い昔だ。


須賀さんの文章はしっとりと静かで、そういえば微かに霧がかかっているようだ。読んでいると私自身までその静謐さの中に包み込まれるようで、大変心地よいのだが、雑駁で意固地なわたしの性格とは決定的に肌合いが異なるため、好きな中にも距離というか、かすかな壁を感じる。翻訳家としての、学者としての須賀さんの真面目さ、真摯さが、わたしに後ろめたさを感じさせるためもあると思う。なんたってわたしは自他ともに認めるloutra(=lousy translator)だから。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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