謹賀新年「プライム・サスペクト」

  • 2009/01/02 15:33
  • Category: 映画
2日、お仕事始め。てか、31日も仕事で元旦しか休みじゃないんじゃ、日本的な“正月気分”には全然なれませんが。当然ながらおせち料理など全くなく、昨夜のメインディッシュはかぼちゃ。冬至と間違えてるか?てなもんである。


そのかぼちゃを食べながら何をしたのかというと、ヘレン・ミレン主演の「プライム・サスペクト」の第1話を見たのである。3時間余りの長丁場だったが、見る側をまったく厭きさせない、なかなかよい出来の映画だった。犯人と目される人物はハナから登場しているので(なんたってタイトルが「プライム・サスペクト」だし)、楽しむべきは謎解きではなく主役のヘレン(役名ジェーン・テニスン)をめぐる人間ドラマだろう。私自身、第一容疑者が本当に犯人かどうかより、ロンドン・サザンプトン・ロー署初の女性主任警部として、周囲の強烈な男性優位主義、恋人や家族との個人的生活(家庭と仕事の両立という、あの永遠に消えてなくならないうんざりするテーマ!)との軋轢の方に目が行っていた。


何しろ制作が90年代初めということもあって、周囲の男性優位主義がすさまじい。もともとケイサツはタフでマッチョな男社会だし、その中でも殺人課はことに“女なんかお呼びじゃない”ところ。しかも急遽トップに立つことになったジェーンの前任者は、課員全員に慕われていた太っ腹でさばけた男。その男が勤務中に心臓発作で急死しての後釜となれば、課員は最初からジェーンに好感は持ち得ない。情報を伝えない、命令に従わないなどは序の口で、陰であれこれ足をひっぱるなりふりかまわなさは相当なものだ。
こうした扱いは当然署内だけではなく、部下の男性と地方に行けば、相手は当然男性の方が階級が上だと思い(たとえその男性刑事が、頬ににきび跡が残っているような若い男の子でも)、部下の方に挨拶するし、被害者の父親は「女なんかじゃ話にならん。男を出せ!」と息巻く。


家に帰っても同じだ。主任警部になってから昼も夜も仕事に没頭しがちのジェーンに、同居の恋人のピーターは大いに不満で「君は自分のことしか考えていない」となじり、ある日地方での捜査が長引き、ピーターの大事な取引先を招いてのディナーに遅刻しかけたことをきっかけに、家を出てしまう。9時−5時勤務、残業なしの事務員じゃあるまいし、刑事稼業のパートナーにどうしてディナーパーティの料理人兼ホステスとなることを期待できるのか、私にはこのピーターの頭の中がわからない。昔からの男と女の役割分担概念は、いったいいつになったら消えるのだろう。ジェーンとピーターが男女ではなく同性同士のカップルだったら、ピーターは相手にそこまで期待しただろうか。男と女の二人組の場合、どうして女の方だけ常に仕事をした上に家事もすることを期待されるのだろう。いい加減、変わってくれよ、である。(ちなみにローリー・キングの探偵小説シリーズでは、刑事ケイトとセラピスト、リーの女同士のカップルは、ケイトが約束したディナーの時間に遅れるとリーは怒るが、出て行ったりはしない)


その“いいかげん、変わってくれよ”という、うんざりした思いは私一人だけではなかったのか、「プライム・サスペクト」の約15年後、2005年のL.A.が舞台の米のテレビドラマ“Closer”では、新任の殺人課チーフ、ブレンダは最初こそ“外から来た女”ということで課員の反感を買うが、プライム・サスペクトのジェーンほど足を引っ張られたりはしない。周囲も女が序列第2位(deputy chief)に立つことを、さほど違和感なく受け入れているように見える。恋人のFBI捜査官フリッツに至っては、ブレンダにいいようにあしらわれている。ブレンダのために料理する分でも、同僚を招いてのディナーパーティのためにブレンダが料理をするとは、夢にも思っていない感じだ。


TVドラマや映画、小説などは現実ではないが、現実をある程度映す鏡ではある。だからそうしたバーチャルな世界の中で、男や女の役割・立場や社会のありよう、人々の考え方が変わって行くということは、現実の世界でもそうした変化が起きているということなのだろう。50年代の映画、80年代の映画と今の映画を比べれば、社会が変化しつづけていることは明白だ。ある部分、あまりに歩みがのろいとは言える分でも。


新年早々こんなに長々書いたのは、仕事が午前11時で終ってしまったためだ。それでも5時半までは会社にいないと給料もらえん。学生と違って、途中でフケるわけにはいかんのだ。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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