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となりのロバさん

  • 2007/09/27 16:36
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そういえば夫が入院した時の同室は、北アイルランドの人だった。30数人の団体で中国でチャリティ・ウォークを実施していたところ、万里の長城から落っこち、足首を挫いたか、折ったか、したのだそうである。そして北京の病院では言葉が全然わからないし、万里の長城から北アイルランドに搬送してもらうのも大変なので、インターナショナルSOSの手配により、HKの山の上の病院に移送されてきたのだそうである。まあここなら医師、看護師から始まって食事を運んでくれるメイドさんまで全員英語が通じるし、北京の病院よりは設備環境もいいだろう。

お名前がロバートさんという人だったので、わたしは「となりのロバさん」と呼んでいたが、長距離ランナーによくみられる、ほっそりしてはいるが強靭な身体つきで、暗い金色の髪と青い瞳がいかにもガイジンで、ちょっと緊張。(コケイジアンを夫にしておいてこんなことを言うのはおかしいかもしれないが、夫は髪は白黒だし、瞳も茶色なので、あまりガイジンだという気がしないのだ。だからいまだにブロンドの人とか、明るい瞳の人とかとお話しすると緊張するのだ) しかしお話しぶりは大変静かで落ち着いていて、まるで学者か研究者のような感じだったので、北アイルランドの人と知るまでは、てっきりHKの金融街か大学あたりにお勤めの人かと思っていた。

私自身が直接お話したのは、夫の手術中に、誤ってロバさんが使用中のバスルームのドアを開けようとしてしまい(何しろあんまり長い間身動きの音がしなかったので、てっきりもう出て行かれた後と思ったのだ)大慌てで謝罪した時と、その後の一言二言だけだったので、ロバさんの事情についてはすべて夜間ロバさんとおしゃべりした夫から聞いたのだが、世の中に万里の長城から落っこちて、HKの病院に運ばれてくる北アイルランド人がいるとは、なんとまあ面白い。もちろんロバさんにとっては“面白い”なんていう経験ではなかったとは思うが、少なくともロバさんの奥さんは、予定していた中国だけでなく、HKの病院まで観光したロバさんを羨ましがっていたそうである。

ロバさんは夫と同じく日曜に退院し、来た時同様インターナショナルSOSが手配した日曜の深夜便で北アイルランドに帰ることになっていた。日曜の深夜便=日曜の夜の遅い便と解釈したロバさんは、だいぶ自由に動けるようになったせいもあって、土曜の午後は近所のピークに観光に行ったり、食事に出たり、のんびり過ごしていたのだが、その夕方になって日曜の深夜便というのは実は日曜の午前0時半HK発の便、つまり病院を出るのは土曜の夜とわかって、看護師ともども大慌てでレントゲン写真や書類を用意したり、必要分の薬を受け取ったり、かなりのどたばたを展開していた。まあ同じ話を聞いた私たちも、日曜の深夜=日曜の夜遅く、と解釈し、日曜の午前0時過ぎとは思わなかったのだから、ロバさんや看護師たちを責めるわけにはいかない。土曜の夜別れのあいさつをした夫によると、ロバさんは手荷物として病院提供のビニール袋2つを持ち、看護師に送られてタクシーで空港に向かったそうである。
ちなみにロバさんはその物腰からは想像できないが酪農を生業としているのだそうだ。今ごろは北アイルランドの田舎で、奥さんと二人の娘と、うるうると大きな目をした乳牛たちに囲まれているのだろうか。
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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、米朝、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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