伯母さんと毛糸屋へ

一昨日は伯母さんの一人に、毛糸屋に連れて行ってもらう。旧隣町にある大きな警察署のそばとは聞いていたが、実際に行ってみたら警察署と同じ平屋の建物の中にあった。正面から入ると警察、横手の入り口から入ると毛糸屋という具合。合同庁舎的に政府関係の機関が一つの建物の中に入っているのは珍しくもないが、警察と毛糸屋という組み合わせにややびっくり。「うーむ、この建物の所有者はケベック政府か、はたまた民間人か。民間人だとしたら毛糸屋も警察もその人に家賃を払うんだろうか?」とつまらぬことを考える。

 

毛糸屋自体は広い倉庫のような店内に余裕をもって棚が配置され、毛糸が種類ごとに並んでいる造り。選びやすく買い物はしやすいが、香港や日本の、棚にぎっしり詰まった各種各様の毛糸の山を見慣れた目には、お世辞にも品ぞろえ豊富とは言えず。それでもアクリル100%の毛糸ばかりのウォルマートや他のスーパーよりはまし。せっかく来たのだからと、カナダ製と思われる硬い手触りの生成りの並太1かせ(毛100%)、くすんだ紺色の極細1玉(毛80%、アクリル20%)、ブルーグレーの並太2かせ(ペルー産ラマの毛100%)と3号の短5本針を買う。〆て38.33ドルなり。散財。

 

ところでこの毛糸屋に連れて行ってくれた伯母さんはお義父さんの姉上で御年82歳。歩くのがやや不自由だったり、身体的には少々問題があるが、頭脳や精神面はかくしゃくたるもので、今回も「私が迎えに行きましょうか?」と提案したら「私がそっちに行くわよ」と言って、実際色のさめた古いフォードか何かを運転してウチまで来て、そのまま毛糸屋に連れて行ってくれた。母語はフランス語だが、英語も流暢に話す。毎日、教会の活動その他で忙しい様子で、毛糸屋の後も「教会に行く用事があるから」と言って私と雪だるまのお茶の誘いを断り、そそくさと帰って行った。伯母さんには子供が3人おり、次男夫婦は他州にいるものの、娘はモントリオールに、長男一家は同じ町内に住んでいる。しかしその誰とも同居はしておらず、また今後もするつもりはないようで、衰えつつある身体面を考慮して簡単なケア付きアパートに移りたがっている。

 

周りを見渡しても、年老いたからといって子どもが親と同居するケースはあまり多くないように見受けられる。スーパーでも老夫婦がよろよろと/あるいは元気に、大きなカートを押している姿をよく見かける。雪だるまの父方も母方も、おじさんおばさんはみな、老夫婦だけで生活している。唯一の例外は義弟ジェリーと同居しているお義父さんだが、これはマッサージ師という仕事を始めたばかりで収入の不安定なジェリーが「家賃タダ♪」を目当てにお義父さんとこに居候しているのであって、逆ではない。

 

広くもないアパートで親子三世代がごちゃごちゃと同居している香港を見慣れた目には、北米のこの自立心旺盛とも、ドライともいえる親子関係は私には好ましく思えるが、老いて独りになった時、その独りを尊厳を持って貫き通すには、強靭な精神力が必要だ。この日の夜、カナダ映画の『Incendies』を見たせいもあり、何があってもつぶれず生き抜く強い精神とはいったい何なのか、しばし考える。

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ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
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