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病気の沙汰も

  • 2007/01/11 17:13
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先週から休んでいたNちゃんが入院したので、月曜日、マンディさんと一緒にお見舞いに行った。病院はその医療水準の高さと、診療費用の高さでご当地トップクラスのひとつ、S医院である。広東語、英語とも不自由で、しかし会社の医療保険に手厚くカバーされた駐在員諸兄ならいざ知らず、言語に不自由がなく、しかし給与は私と同じ現地水準、保険のカバーも同程度と思われるNちゃんが、なぜあえて、たっかーいこの病院を選んだのか不思議だったが、行ってみて納得。どうせ入院するんだったら、わたしもこの病院に入りたい!

なんたって病院臭さが全然ない。そもそも雰囲気が病院というよりホテルなのだ。やわらかい間接照明が多用され、スペースもゆったりと、いかにもお金持ち好みの内装になっている。エントランスホールと外来受付の間には、ゆるくカーブを描く階段があり、金属の手すりには、金色だったか、茶色だったかの葡萄の葉が絡まった装飾がついていたが、あれは装飾の一環なのだろうか。それとも実際にどこかにつながる階段なのだろうか。なんだか、まるで風と共に去りぬのスカーレット・オハラあたりが、ドレスの裾を引きずって降りてきそうで、無味乾燥な公立病院しか知らない私は、口を開けてちょっと見とれた。
入院患者の病室自体もゆったりとアレンジされ、私が知る日本の一般病院の5割増の広さか。しかも部屋の中に、トイレがある。6人部屋に2つのトイレである。車椅子でも入れるようゆったりと配置され、広さはもしかしたら私の寝室兼PC部屋よりも広いかも。ここでもオレンジ色を帯びた暖かい色の照明が使われて、日本の病院のトイレの寒々とした蛍光灯に照らされた白い空間とは雲泥の差。父や母が入院した際の付き添いで、私も日本の病院へは何度か行ったが、病室はともかく、トイレ、洗面所のあの冷たさには、いつ行っても気が滅入ったものだったが、このトイレならたとえけろけろ吐く時でも、ゆったりと優雅に吐けるかも。

しかもこの病院、こうしたハード面だけでなく、医療スタッフの対応も大変よいのだそうである。以下はすべてマンディさんからの受け売りだが、以前、夜半に急に出血が止まらなくなった時、緊急外来で駆けつけた別の大病院では、パニックになっているマンディさんを前に、看護婦がかかりつけの主治医のところへ行けといい、マンディさんが主治医と言っても数年前のことで、主治医の名前も覚えていないし、電話だってわからないと言うと、それならその時の病院に行け(その病院は海を渡った半島側にあり、車でも30分はかかる)と言って、受付を拒否したそうで、頭にきたマンディさんとご主人は、すぐにそこから10分と離れていないS医院に車を向け、無事診察してもらい、出血も止まったそうである。また子ども達が夜中に発熱した時も、公立病院の場合、緊急と判断されなければ1時間半〜3時間待ちは普通だが、S医院なら必ず1時間以内に診てもらえる。
先日、心臓検査を受けた後、マンディさんは弊社の保険がカバーする割安の病院とS医院と両方に行ったそうだが、診断にしても薬に対する知識にしても、S医院の担当医の方が、はるかに優っていたそうである。そのうえさらに看護婦さんや他の医療スタッフの対応も、ご当地には珍しくやさしく丁寧(マンディさんの弁)だそうで、確かに昨日のお見舞いの時も、そのあとマンディさんにくっついて心臓科を見に行った時も、看護婦さんたちの対応は、大変感じがよかった。

ただし、こうした素晴らしい対応には当然対価が伴っており、S医院の費用は、他の一般私立病院の20〜60%増しだそうである。(公立病院は比較対照にならないほど安いので、比較しない) ご当地にはこのS医院の他に、A医院だの、C医院だの、M医院だの、お金のある人御用達の病院がいくつかあるが、これらはみなそのクラスだそうだ。
ちなみに、上に書いたマンディさんの心臓検査、最初に公立病院に予約を入れた時には、1年後の日時を言われたそうである。実際に心臓に痛みを感じていたマンディさんは、冗談じゃない。1年後ではそれまでに死んでしまうかもしれないと、公立病院の何十倍かの費用には目をつぶって、改めてS医院に予約を入れたら、こちらは1週間後の日にちをくれたそうだ。金のない奴は早く死ぬのもやむを得ないと言わんばかりで、地獄の沙汰も金次第とは言え、ここまであっけらかんとはっきりしていると、却ってすがすがしいかもしれない。

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Comment

板前

「病気は金で治せ」といわれても、日本ではいまひとつ実感がわかないのですが、このお話はものすごくわかりやすいです。お金はないけれど、病気って気持ちの部分で治ることが多いので、いいサービスを受けることって本当はものすごく大事なんでしょうねぇ。 儲けたらそちらで病気になろうぉぉっと(笑)
  • URL
  • 2007/01/11 18:48
  • Edit

loutra

それでは板前さまには、SではなくM医院 http://www.matilda.org/eng/index.php">http://www.matilda.org/eng/index.php をお勧めいたしましょう。
映画『慕情』のモデルにもなったと言われるMは、HK島南岸の素晴らしい環境の中に、白いコロニアル風の美しい姿で、涼やかに建っているそうです。
しかもここの食事はリッツ・カールトン(!)クラスだそうでございまして、ほら、板前さん、病気になりたくなってきましたでしょう?(笑)
でも、その食事を楽しむためには、できればご病気ではなく、外科的なお怪我で入院なさることをお勧めいたします。
どうぞお食事と周囲の素晴らしい環境をご堪能くださいませ。
(って、わたし行ったことないんですけど。口上だけで、すみません)
  • URL
  • 2007/01/11 23:10
  • Edit

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らうとら

Author:らうとら
ドロシー・L・セイヤーズ、ローリー・R・キング、P.D.ジェイムズ、ディック・フランシス、水村美苗、高村薫、戸塚真弓、ヘレン・ミレン、シャーロット・ランプリング、ソフィ・マルソー(40代以降に限る)、ヘレナ・ボナム・カーター、アンジェリーナ・ジョリー、三代目金馬、小さん、米朝、枝雀、エンヤ、クイーン、ドゥルス・ポンテス、マドレデウス、J・S・バッハ、ちあきなおみ、トケイ・ピノ・グリ、アール・グレイ、自転車(冬季を除く)、あらゆる犬と猫
以上、私を幸せにしてくれる方々(敬称略)

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